Various Artists - Deep Fried (Compiled by Dj Shiva Moon)[2/2]
1月 31, 2008 Trance (Dark Full On), Trance 3 Comments06.Neuromotor – Virtual Memory
攻撃的なフルオン・サウンドを基調としながらも、その音楽性は高揚感豊かなトラックから、ダーク色の濃いトラックまで幅広く、実に多くのコンピに名を連ねる存在であるNeuromotor。「Neuro Damege」や「Bloody Reality」などのオリジナル・アルバムも有名である。
イントロから何のヒネリも無くスタートするリズム・トラック。今回のコンピ収録曲の中では異質とも言える「動きのあるベース」が王道的な印象をリスナーへと与えつつ、自己主張の薄い上モノが少しずつ曲の世界感を彩ってゆく。
2:11から、これまでFxとして使われていたアシッド感のあるシンセがリフへとチェンジし、これまで若干ラフであった雰囲気から一転、緊張感高まるパートへと突入する。展開としての意外性も兼ね備えており、インパクトはなかなかのもの。
2:52からは上記のリフに替わって不穏なメロディーの上モノが登場。無機質感たっぷりに奏でられるこのシンセ、単調ではあるが、ダーク寄りの不快なサウンドを促すのには適切な表現だと言えよう。
中盤付近では特に目立った動きは見られず、リズム隊の単調さも含めて物足りないが、4:00からベースがスタッカート気味になり縦ノリ感を突然強調する展開を聴かせるなど、序盤のテーマ移行の内容も踏まえて、意外性といった点では評価できる。これは経歴から滲み出るNeuromotorのセンスだと言えるだろう。
後半は5:17からリフレインするメイン・リフを軸に、定番とも言えるシンセを所々織り交ぜながら展開する。6:23からはベースも大胆に動き出すピークタイムへと突入するが、上モノに大きな変化が見られない為「爆発的な盛り上がり」とまでは至らず、中途半端な印象を受ける。(焦点を「王道的フルオン・スタイル」に合わせて考えた場合は、この限りではない)
実にアッパーかつ、安定感のあるサウンドではあるものの、本作「Deep Fried」の収録曲としてはアピールポイントが少なく感じられる。定評のあるNeuromotorだけに、少々残念な内容であった。
07.Delysid - Rajasthan Army Rmx
知名度の上昇が驚くほど早いのは、その高いスキルはもちろん、曲のコンセプトが決して照準を逸脱する事なく、Sao Paulo(ブラジル)出身Delysidの個性に染められている事に尽きるだろう。攻撃的、民族的、退廃的、と様々な言葉が浮かぶが、どれを取っても彼らの個性を表現するには要素が足りない。今回収録された曲もまた同じく、Delysidを知るには十分な魅力で溢れている事を先に触れておこう。
イントロはアラビア楽器であるシタールを用いたものであるが、半音階で演奏されるその音色は「非アラビア的」であり、深く沈みこむ単音キックや、英語のナレーションも手伝い、実に不気味な雰囲気を醸し出している。
リズム導入後、バックはIm - Vを繰り返す単純な短調だが、その上で中音域の効いた特徴的なパッド音がテーマを奏で、リスナーをDelysidの個性的な世界へとグっと引き込んでゆく。重過ぎず、タメの強いキック音、派手な動きではないが着実にコード構成音を押さえていくタイトで冷たい印象のベース、ぐにゃりと曲がった民族的なシンセ。彼らの音に対する「徹底ぶり」には感心させられる。
曲構成も自然な流れを最後まで貫いている。2:50あたりにかけて聞かれる、メインテーマを残しつつ、音を切り刻むBeat RepeatやGatingを多用した表情の移り変わり、3:30のブレイクからリフレインする、中高音のリード音を軸とした音数の多いアルペジオ、後半では同テーマを軸とし、Flangerを深めにかけたBlow系のリード音に展開するなど、実に無駄がなく、巧みに構成されている。また、細かなブレイクもDJタッチなものが多く、ここぞという所でキメてくれる点も嬉しい。
6:13からのピークタイムでは、従来のゴアトランス・フリーカーでも唸ってしまう程の盛り上がりを演出する。ダーク系統ならではのこの破壊性は、時にメロディアスでもあると言えるだろう。終盤付近では、ピッチをあえて外す手法を用い、「壊れてゆく様」を演出しているようでもある。ラストはその余韻を残しつつ、イントロを介入して曲は終了。
近年ではファーストアルバム「Noize Infection」をリリースするなど、精力的な活動を続けているDelysid。これだけアクが強い曲をドロップし続けているアーティストだけに、万人受けするとは言い難いが、その表現力の高さには是非触れて欲しいと思う所である。
08.I-DNA - Psycho Bitch
続いて、全くの無名であると思われるI-DNA。今現在、Myspaceで公開している僅かな情報でしか彼を知る事が出来ないが、今回収録された曲”Psycho Bitch”から伝わってくるオリジナリティは、アンダーグラウンドながら強烈な存在感を放っている。一概にこの曲だけを聴いて、彼のスタンスを固定させてしまうには早いが、今後、気になる存在としてトランスシーンに君臨してくれる事を期待しつつ、情報を待とう。
Myspaceでの情報はこちら↓
http://www.myspace.com/index.cfm?fuseaction=user.viewprofile&friendid=188821504
これはフルオンスタイルと言って良いのだろうか。基本的に聴こえ方は明るく、開放的ではあるが、曲全体に渡ってN.C.(No Code)が貫かれており、コードがマイナーもしくはメジャーに定まることがなく、終始不安定感を演出し続ける非常に風変わりな曲であるため、一度聴いただけでは難解な部分も少なくない。上モノもクセのある独自の表現で、音単体は明るめのシンセを起用しているものの、気持ち悪さが先行するメロディラインが幾つも存在するため、摩訶不思議なロシアン・サイケ(スオミ)的だといった印象さえ受けてしまう。そういった意味では、やはり「ダーク系統」に分類される曲ではないかと思われる。
比較的短めの不穏なイントロからスタートするリズム・パート。ゲートタイムの長めのベースが比較的高い音域において演奏され、BPMの割に疾走感を演出する。ここから徐々に入り込むシンセが、ベースラインが印象付けたコード感を徐々に破壊してゆくさまは、正にサイケデリックと言った所だろうか。
0:40〜のパーカッション的なシンセ、1:47〜のリフ、2:30から徐々に聴こえだすシンセなどなど、特定のメインテーマを据えず、2〜3個の性質が異なるリフが「掛け合い」ながら曲は展開してゆく。この手法自体は珍しいものではないのだが、上記の通り全体がN.C.で構成されているため、移り変わってゆく音を拾うたびに別の世界が創造されるという、非常に斬新なサウンド・スタイルを提示している。
中盤〜後半にかけても大きな変化はなく、上モノを次々と変化させ曲は展開してゆく。6:30に、一瞬Im7が聞かれるが、それもつかの間、ベースは元の構成へと直ちに戻ってしまう。その後も際立ったピークタイムなどは存在せず、一定の熱量を維持したまま曲は終了。
リスナーを飽きさせない構成は勿論、「また聴きたい」と思ってしまうアンダーグランド的要素がたっぷりと詰め込まれている”Psycho Bitch”。ドロップしたI-DNAの今後のアクションに注目したい所だ。
09.Audialize - Contact
トリを飾るのは、破壊性と繊細さを兼ね備えた、独自の世界観を提示し続けるポルトガル・クリエイターAudialize。今までにフルアルバムを2 枚リリースしたほか、ダーク・フルオン系統を中心とした数々のコンピに曲を提供しているため、近年では有名な存在となっている。
シリアスな雰囲気のイントロから曲はスタート。比較的アタック感の強いキックに、淡々と刻まれるベース。王道的ではあるが、ダークな感覚とは少しニュアンスが違い、イントロの余韻も残されている為か、どこか物哀しげな印象を受ける。
続いてリフレインする最初のテーマは最後まで活躍。中国の民族楽器の簫(しょう)だと思われる、民族管楽器の音色が独特の浮遊感・懐古感を演出すると、エッジの効いたアシッドなシンセ、およびアタックの遅い単音のSine Waveが高音域に加わり、全く異なった2つのテーマが絡み合うといった展開へ。
中盤、上モノに大きな変化はないものの、3:33のブレイクからはコードに動きが付加される。Im→Vm→VIIm→Imという変則的なコード進行ではあるが、不思議と不自然な印象は残らず、曲全体に漂う雄大な雰囲気をより一層強めているようでもある。
4:27辺りから上モノが自己主張を強め、徐々にヒートアップし、流れるような展開でフルオン的アプローチのピークタイムへと突入。アシッド感強めのテーマに、縦ノリを強調したリズム・パート、5:07からリフレインする高速アルペジオなど、一段と攻撃的に曲は展開してゆく。更に、ここでも曲の顔となっている民族管楽器が絡むため、序盤から創造されてきた曲の雰囲気はそのままに、その音色は溢れ出す感情とリンクするかの如く、高ぶる高揚感・浮遊感を確実なものへと導いてゆく。巧みなシンセ使いによる表現と、抽象的な印象を与える表現が同居した、斬新かつ見事なピークタイムであると言えるだろう。
アルバムの序盤で聴かれたような、混沌としたダークスタイルとは別物ではあるが、Audializeのセンスが滲み出たこの曲のクオリティは実に高く、アルバムを締め括るのには十分な魅力に溢れていると言えるだろう。
まとめ
新レーベル第1弾のリリースとなる本作だが、そのサウンド・クオリティには驚かされる。M-1.Concept、M-3.Tryambaka、M- 7.のDelysid、M-9.Audizlizeなど、様々なサウンド・アプローチが同居しているため、このコンピを「ダーク・フルオン」の一言でジャンルを位置付けてしまうには実に勿体なく思う。これは一貫性に欠けるとも取れるが、それぞれの個性が堪能できるトラックが大半を占めているため、バラバラだといった印象を受ける事はない。これも、本作の特徴の一つである。
音質としては、コンピなので一概には言えないが、ボリューム・バランスも良く、音圧レヴェルも整っており、全体として気になるような所は無い。ストレスを感じる事なく、リスニングなりDJプレイを楽しめる事だろう。
収録されているアーティストがベテランなのか新鋭なのか、はたまたアンダーグラウンドな存在なのかは問う必要性がないと言ってよいほど、ハイ・クオリティなアンリリース・トラックで構成された本作”Deep Fried”。2008年2月現在、Rudraksh Recordsに動きは無いが、まだまだリリース量が多いとは言えないダーク・フルオン界に、今後どういった風を起こすのか期待しつつ、次回作を待ちたい所だ。
