Various Artists - Deep Fried (Compiled by Dj Shiva Moon)[1/2]
1月 1, 2008 Trance (Dark Full On), Trance 2 CommentsArtist : Various Artists
Title : Deep Fried (Compiled by Dj Shiva Moon)
Label : Rudraksh Records
Released: 2007
2007年、世界はインドよりDJ Shiva Moonがオーナーとなるニューレーベル「Rudraksh Records」が誕生。本作「Deep Fried」は記念すべき第1弾のリリースとなる。紫を基調とし、カラフルでサイバー感溢れるデザインのジャケットに、まず目を奪われる。本作は多数のアーティストをコンパイルしたV.A(Various Artists)で、ダークフルオン・クリエイター達の強烈なトラックが目白押しだ。ちなみに、コンピではあるがNon-Stop MixCDではないので、DJ用としても使える1枚となっている。
オフィシャルサイト:http://www.rudrakshrecords.com/
01. Concept - Electro Undulation
アルバムのスタートを担うのは、最近(2007年現在)2ndアルバムをリリースしたばかりのConcept。まずは挨拶程度・・・と思いきや、頭から強烈なダークフルオン・サウンドが展開してゆく。
曲のスタートと同時に、何やら不気味な環境音的パッドが飛び交う中、入り込む英語のナレーションがその雰囲気を増幅させてゆく。このナレーションの内容は、世界的に有名なヴァイオレンス・アクションゲーム「Biohazrd」に登場する、”Umbrella Corporation”という架空の企業の説明であり、曲との関連性は不明だが、興味深い演出である。(”Umbrella Corporation”の解説についてはこちら http://en.wikipedia.org/wiki/Umbrella_Corporation)
ソリッドかつミニマルで、かつ深く沈み込むリズム・トラックとベースラインが、ダークな描写ながらタイトな印象をリスナーに与える。淡々と繰り返されるだけではなく、リズム・バリエーションをフィルインに代えたり、コード感を押さえつつもオクターブ幅で動いたりと、実に芸が細かい。ブレイクで聴かせる HPF(High Pass Filter)等のエフェクトの使い方も効果的で良い。
肝を握る上モノ使いも実に多彩で、序盤こそ金属的パッド+Fxでの色付けがメインだが、中盤以降ではエグいアシッド・シンセが徐々にその姿を現し、トリップ感を増幅させてゆく。ザクザクと刻まれる、ダーク系統ではおなじみのシンセリフと、パンポットを自在に操りながら空間を飛び回るアルペジオ・シンセが絡み合う展開は、王道的であり、やはり強烈なインパクトである。不安定なメロディ・ラインも特徴的だ。
アルバム1曲目ながら非常にクールなサウンド。まさに、闇への招待状といった所だろうか。
02. Phyx - Fatality
南アフリカが誇る有名レーベル(Time Code, Afrogalactic等)のコンピに、幾度となくトラックを収録してきたPhyx。ダーク・フルオン界ではトップ・クリエイターの一員と言っても過言ではなく、Randam LとShift、そしてこのPhyxとが手を組んだTwisted Systemや、TicketとのユニットBrethrenなど、別名義も掛け持つほどの存在である。
さて、そのサウンドはどうだろうか。かなり低めでドロドロとしながらも、中音のアタック感の強いシンセ・ベースが曲のキャラクターを創造してゆき、淡々と刻まれる、無機質感満点のリズム・パートがその世界を確実なものとしてゆく。冷たく、一寸先の見えない闇とは、こういったヴィジョンだろうか。
序盤からバッキングで聞かれる、付点八分ディレイのかかった減衰音シンセが、様々にパン変え、まるで虫の飛び交うような異様な雰囲気を醸し出す。所々でサンプリングされている奇妙なボイスや、メロディーとは呼べぬシンセFxなども、その雰囲気と見事にリンクしている。
3:00付近のブレイクからリフレインする、半音進行で下降するシンセ・アルペジオが、生温く、ゆったりとした空間を演出すると、この曲のメインテーマである、V度のパワーコードのリード・シンセが、4:00付近から徐々に高音から聴こえ出し、4:50付近の華麗なブレイクからエフェクトをフル開放させる。これは見事。トリップ感溢れる演出である。(同様の演出は5:45, 7:20のブレイクでも聴かれる。)
その後はこのメインテーマと、様々なシンセとが融合し合い、軽めのブレイクを挟みつつ曲は展開してゆく。8:00付近のブレイクから、序盤で聴かせたシンセが大集合し、ピークを演出するが、「パターンを使い回してる感」が否めず、曲の長さも相成って、少々ダレ気味な印象を受ける。しかし、そのサウンド・クオリティは高く、同時に個性的であり、良い意味では「どっぷり浸かれるサウンド」とも言えるだろう。
03. Tryambaka - My Black Engel
続いてポルトガル・トランスクリエイターTryambakaによる「My Black Engel」。
多数のコンピ・アルバムに楽曲を提供してきたアーティストだが、いずれもアクが強く個性的で、同時に構成が複雑であるため、一度聴いたらなかなか忘れられないトラックが多い。また、やっている事は紛れもないダークフルオン・トランスだが、曲が醸し出す雰囲気がどことなくゴシック・メタル調である事も特徴的である。
ちなみに、2007年の12月に1stアルバムをリリース予定なので、こちらも注目されたい。(詳細はオフィシャルページ:http://www.tryambaka.com/ にて。)
アタックに高音の利いたバスに、淡々と地を這うベースが絡み、曲はスタート。序盤は特に目立った動きはないものの、バックで流れているジュルジュルとしたアシッド系シンセが徐々に形を整えて姿を現し、奇妙な一体感を演出する。このシンセは全編を通して活躍。
1:35付近のブレイクからは、上モノと共にスライドするような突飛なコード進行と、それに乗る自然的短音階でゴシック色を強めてゆく。サイケデリックでありながらも、神秘的とはまた違った、虚ろげで退廃的なこの雰囲気は簡単に描けるものではなく、良い意味で大変気持ちが悪い。
4:20からは雰囲気が一転。コードを固定させ、Fxをメインの上モノに安定感・ソリッド感を前面にアピール。ゴリゴリのダーク・サイケでも十分に通用しそうなこのパートは強烈である。更に、5:15でベースをまるで低音域ギリギリまで下げるようなコードチェンジが待っており、よりドロっとした雰囲気の中で、曲のトリップ感は増幅してゆく。
このパートのブレイク後、女性ボイスをピッチシフトする手法が不安感を煽ると、加熱する曲はピークタイムへと突入。前半とは音色・アレンジの違った螺旋状のメロディーが、より一層の絶望感を描いているかのようだ。最後まで飽きさせない曲構成もさることながら、ありきたりなダーク・サウンドとは一線を画した表現は見事。今後が楽しみである。
04. Shift vs Abomination – Aftermath
南アフリカの大ベテランにして代表的クリエイターChris HoyことShift。この曲は現代ダーク・フルオンサウンドの象徴と言っても過言ではないだろう彼と、そのShift自身が運営するレーベルNexus Media所属の、同じく南アフリカ・クリエイターAbominationとの共作となっている。
意図的にかけたと思われる、不自然なオーバードライブを伴うパッド音が不快感いっぱいにイントロを飾ると、地を這うキックとベース、同時に不気味な英語のナレーションが聴こえて来る。何とこのナレーションは、映画「Underworld」で使用された台詞であり、途中で” To witness this monster’s aftermath”という台詞がある事と、曲のタイトルが連動している事を含めると、この曲のコンセプトは映画「Underworld」に焦点が置かれているのでは無いかと思われる。意味深かつ、興味深い謎掛けである。
“But William must be controlled”というナレーションから、グッと押し寄せる冷酷なベースラインと、タイトなドラムパート。上を飾る図太いリード音による定番のリフが、微妙なニュアンスの違いをちらつかせながら舞っている所に、Stab系シンセのきらびやかなテーマがリフレインし、テーマをバトンタッチさせる。これはなかなか見事な演出である。
3:10から始まる移行部では、馬のいななく声や、日本太鼓の音などがFxとしてふんだんにちりばめられており、上モノに頼りがちなキラーパート一辺倒で構成されている曲とは一味違った面白みがある。また同時に、こういった「サイレント」なパートを曲の中間に挟む事で、曲全体に締まりを与えているほか、ゾクゾクとする恐怖感と期待感、その両方を煽る働きを担っているとも言えるだろう。
5:14のブレイク後は、Stab系シンセのテーマがリフレインするが、今回はベースの動きを伴う事で、より一層の一体感をリスナーへと与えてくる。ブレイクも細かめの動きが多く、バスを1小節のみ裏打ちにするなど、純粋にカッコよく決めてくれる点も評価できるものであり、単調になりがちなリフの連続に対する良いアクセントとなっている。
その後は徐々にアシッドシンセやアルペジオを足してゆき、曲のテンションは最高潮へ。この感覚は、アプローチやメロディー・タッチこそ違うものの、90年代に盛んであったゴア・トランスの感覚に近いものがある。Shiftのベテランっぷりが垣間見えるようだ。
05. Abomination - Pusherman
続くトラックは、先述でも触れたAbomination。近年ではデヴュー・アルバム「Enemy Within」をリリースするなど、南アフリカ・トランスクリエイターの中でも精力的な活動を行っている。また本アルバムを含め、様々なレーベルのコンピに参加している事もあり、そのサウンド・クオリティは多方面から評価されているようだ。
トリッキーかつ変態的な拍子のポリ系シンセが、単音弾みでイントロを飾っている所に、ザクザクとしたディストーション・ギターの様な深い歪みの掛かったシンセが、何の前触れも無くカットインし、曲の幕が開ける。弱起によるシンセのアプローチが、トランスながらロック・テイストを醸し出しており、リズム隊の無機質感も含め、非常にクールな感覚だ。
1:35付近から徐々に顔を出すメインテーマ。アシッディーな音色と、III - IV - III の繰り返しが非常に印象的である。中盤辺りまではこのメインテーマを軸に構成されているものの、今まで不変であったベースラインが3:30付近からグルーヴィにうねり始めるという展開のほか、4:00付近でのHPFによるバス・カットを大胆に使用したアプローチなど、なかなか凝った展開を聴かせる。
4:25〜後半にかけては、テーマこそ大きな変化はないが、切れ味のいいブレイクを挟む度に重なってゆくシンセとFxが、自然と曲の高揚感を高めると、 6:13から更に激しさを増したベースラインがそれに拍車を掛け、序盤〜中盤で使用されたメイン・シンセが大集合し、まさに「混沌」としたピークタイムが創造される。曲全編に渡って疾走感が維持されている事も手伝って、強烈なトリップ感覚である。ダーク系統ならでは、といった所か。
最後は、ピッチシフトを用いてドラム音(ハイハット)をだんだんと衰退させるという風変わりな手法でフィニッシュ。
今回のコンピ収録曲の中でも、トップクラスのアグレッシヴ・ナンバーであり、明るく、開放的な雰囲気とはまた違ったダーク・フルオンサウンドの良さが濃縮されている曲だと言えよう。きめ細かな手法の数々も評価できる。
