Various Artists - Deep Fried (Compiled by Dj Shiva Moon)[2/2]

Trance (Dark Full On), Trance 3 Comments

06.Neuromotor – Virtual Memory

攻撃的なフルオン・サウンドを基調としながらも、その音楽性は高揚感豊かなトラックから、ダーク色の濃いトラックまで幅広く、実に多くのコンピに名を連ねる存在であるNeuromotor。「Neuro Damege」や「Bloody Reality」などのオリジナル・アルバムも有名である。

イントロから何のヒネリも無くスタートするリズム・トラック。今回のコンピ収録曲の中では異質とも言える「動きのあるベース」が王道的な印象をリスナーへと与えつつ、自己主張の薄い上モノが少しずつ曲の世界感を彩ってゆく。

2:11から、これまでFxとして使われていたアシッド感のあるシンセがリフへとチェンジし、これまで若干ラフであった雰囲気から一転、緊張感高まるパートへと突入する。展開としての意外性も兼ね備えており、インパクトはなかなかのもの。

2:52からは上記のリフに替わって不穏なメロディーの上モノが登場。無機質感たっぷりに奏でられるこのシンセ、単調ではあるが、ダーク寄りの不快なサウンドを促すのには適切な表現だと言えよう。

中盤付近では特に目立った動きは見られず、リズム隊の単調さも含めて物足りないが、4:00からベースがスタッカート気味になり縦ノリ感を突然強調する展開を聴かせるなど、序盤のテーマ移行の内容も踏まえて、意外性といった点では評価できる。これは経歴から滲み出るNeuromotorのセンスだと言えるだろう。

後半は5:17からリフレインするメイン・リフを軸に、定番とも言えるシンセを所々織り交ぜながら展開する。6:23からはベースも大胆に動き出すピークタイムへと突入するが、上モノに大きな変化が見られない為「爆発的な盛り上がり」とまでは至らず、中途半端な印象を受ける。(焦点を「王道的フルオン・スタイル」に合わせて考えた場合は、この限りではない)

実にアッパーかつ、安定感のあるサウンドではあるものの、本作「Deep Fried」の収録曲としてはアピールポイントが少なく感じられる。定評のあるNeuromotorだけに、少々残念な内容であった。

07.Delysid - Rajasthan Army Rmx

知名度の上昇が驚くほど早いのは、その高いスキルはもちろん、曲のコンセプトが決して照準を逸脱する事なく、Sao Paulo(ブラジル)出身Delysidの個性に染められている事に尽きるだろう。攻撃的、民族的、退廃的、と様々な言葉が浮かぶが、どれを取っても彼らの個性を表現するには要素が足りない。今回収録された曲もまた同じく、Delysidを知るには十分な魅力で溢れている事を先に触れておこう。

イントロはアラビア楽器であるシタールを用いたものであるが、半音階で演奏されるその音色は「非アラビア的」であり、深く沈みこむ単音キックや、英語のナレーションも手伝い、実に不気味な雰囲気を醸し出している。

リズム導入後、バックはIm - Vを繰り返す単純な短調だが、その上で中音域の効いた特徴的なパッド音がテーマを奏で、リスナーをDelysidの個性的な世界へとグっと引き込んでゆく。重過ぎず、タメの強いキック音、派手な動きではないが着実にコード構成音を押さえていくタイトで冷たい印象のベース、ぐにゃりと曲がった民族的なシンセ。彼らの音に対する「徹底ぶり」には感心させられる。

曲構成も自然な流れを最後まで貫いている。2:50あたりにかけて聞かれる、メインテーマを残しつつ、音を切り刻むBeat RepeatやGatingを多用した表情の移り変わり、3:30のブレイクからリフレインする、中高音のリード音を軸とした音数の多いアルペジオ、後半では同テーマを軸とし、Flangerを深めにかけたBlow系のリード音に展開するなど、実に無駄がなく、巧みに構成されている。また、細かなブレイクもDJタッチなものが多く、ここぞという所でキメてくれる点も嬉しい。

6:13からのピークタイムでは、従来のゴアトランス・フリーカーでも唸ってしまう程の盛り上がりを演出する。ダーク系統ならではのこの破壊性は、時にメロディアスでもあると言えるだろう。終盤付近では、ピッチをあえて外す手法を用い、「壊れてゆく様」を演出しているようでもある。ラストはその余韻を残しつつ、イントロを介入して曲は終了。

近年ではファーストアルバム「Noize Infection」をリリースするなど、精力的な活動を続けているDelysid。これだけアクが強い曲をドロップし続けているアーティストだけに、万人受けするとは言い難いが、その表現力の高さには是非触れて欲しいと思う所である。

08.I-DNA - Psycho Bitch

続いて、全くの無名であると思われるI-DNA。今現在、Myspaceで公開している僅かな情報でしか彼を知る事が出来ないが、今回収録された曲”Psycho Bitch”から伝わってくるオリジナリティは、アンダーグラウンドながら強烈な存在感を放っている。一概にこの曲だけを聴いて、彼のスタンスを固定させてしまうには早いが、今後、気になる存在としてトランスシーンに君臨してくれる事を期待しつつ、情報を待とう。

Myspaceでの情報はこちら↓
http://www.myspace.com/index.cfm?fuseaction=user.viewprofile&friendid=188821504

これはフルオンスタイルと言って良いのだろうか。基本的に聴こえ方は明るく、開放的ではあるが、曲全体に渡ってN.C.(No Code)が貫かれており、コードがマイナーもしくはメジャーに定まることがなく、終始不安定感を演出し続ける非常に風変わりな曲であるため、一度聴いただけでは難解な部分も少なくない。上モノもクセのある独自の表現で、音単体は明るめのシンセを起用しているものの、気持ち悪さが先行するメロディラインが幾つも存在するため、摩訶不思議なロシアン・サイケ(スオミ)的だといった印象さえ受けてしまう。そういった意味では、やはり「ダーク系統」に分類される曲ではないかと思われる。

比較的短めの不穏なイントロからスタートするリズム・パート。ゲートタイムの長めのベースが比較的高い音域において演奏され、BPMの割に疾走感を演出する。ここから徐々に入り込むシンセが、ベースラインが印象付けたコード感を徐々に破壊してゆくさまは、正にサイケデリックと言った所だろうか。

0:40〜のパーカッション的なシンセ、1:47〜のリフ、2:30から徐々に聴こえだすシンセなどなど、特定のメインテーマを据えず、2〜3個の性質が異なるリフが「掛け合い」ながら曲は展開してゆく。この手法自体は珍しいものではないのだが、上記の通り全体がN.C.で構成されているため、移り変わってゆく音を拾うたびに別の世界が創造されるという、非常に斬新なサウンド・スタイルを提示している。

中盤〜後半にかけても大きな変化はなく、上モノを次々と変化させ曲は展開してゆく。6:30に、一瞬Im7が聞かれるが、それもつかの間、ベースは元の構成へと直ちに戻ってしまう。その後も際立ったピークタイムなどは存在せず、一定の熱量を維持したまま曲は終了。

リスナーを飽きさせない構成は勿論、「また聴きたい」と思ってしまうアンダーグランド的要素がたっぷりと詰め込まれている”Psycho Bitch”。ドロップしたI-DNAの今後のアクションに注目したい所だ。

09.Audialize - Contact

トリを飾るのは、破壊性と繊細さを兼ね備えた、独自の世界観を提示し続けるポルトガル・クリエイターAudialize。今までにフルアルバムを2 枚リリースしたほか、ダーク・フルオン系統を中心とした数々のコンピに曲を提供しているため、近年では有名な存在となっている。

シリアスな雰囲気のイントロから曲はスタート。比較的アタック感の強いキックに、淡々と刻まれるベース。王道的ではあるが、ダークな感覚とは少しニュアンスが違い、イントロの余韻も残されている為か、どこか物哀しげな印象を受ける。

続いてリフレインする最初のテーマは最後まで活躍。中国の民族楽器の簫(しょう)だと思われる、民族管楽器の音色が独特の浮遊感・懐古感を演出すると、エッジの効いたアシッドなシンセ、およびアタックの遅い単音のSine Waveが高音域に加わり、全く異なった2つのテーマが絡み合うといった展開へ。

中盤、上モノに大きな変化はないものの、3:33のブレイクからはコードに動きが付加される。Im→Vm→VIIm→Imという変則的なコード進行ではあるが、不思議と不自然な印象は残らず、曲全体に漂う雄大な雰囲気をより一層強めているようでもある。

4:27辺りから上モノが自己主張を強め、徐々にヒートアップし、流れるような展開でフルオン的アプローチのピークタイムへと突入。アシッド感強めのテーマに、縦ノリを強調したリズム・パート、5:07からリフレインする高速アルペジオなど、一段と攻撃的に曲は展開してゆく。更に、ここでも曲の顔となっている民族管楽器が絡むため、序盤から創造されてきた曲の雰囲気はそのままに、その音色は溢れ出す感情とリンクするかの如く、高ぶる高揚感・浮遊感を確実なものへと導いてゆく。巧みなシンセ使いによる表現と、抽象的な印象を与える表現が同居した、斬新かつ見事なピークタイムであると言えるだろう。

アルバムの序盤で聴かれたような、混沌としたダークスタイルとは別物ではあるが、Audializeのセンスが滲み出たこの曲のクオリティは実に高く、アルバムを締め括るのには十分な魅力に溢れていると言えるだろう。

まとめ

新レーベル第1弾のリリースとなる本作だが、そのサウンド・クオリティには驚かされる。M-1.Concept、M-3.Tryambaka、M- 7.のDelysid、M-9.Audizlizeなど、様々なサウンド・アプローチが同居しているため、このコンピを「ダーク・フルオン」の一言でジャンルを位置付けてしまうには実に勿体なく思う。これは一貫性に欠けるとも取れるが、それぞれの個性が堪能できるトラックが大半を占めているため、バラバラだといった印象を受ける事はない。これも、本作の特徴の一つである。

音質としては、コンピなので一概には言えないが、ボリューム・バランスも良く、音圧レヴェルも整っており、全体として気になるような所は無い。ストレスを感じる事なく、リスニングなりDJプレイを楽しめる事だろう。

収録されているアーティストがベテランなのか新鋭なのか、はたまたアンダーグラウンドな存在なのかは問う必要性がないと言ってよいほど、ハイ・クオリティなアンリリース・トラックで構成された本作”Deep Fried”。2008年2月現在、Rudraksh Recordsに動きは無いが、まだまだリリース量が多いとは言えないダーク・フルオン界に、今後どういった風を起こすのか期待しつつ、次回作を待ちたい所だ。

Various Artists - Deep Fried (Compiled by Dj Shiva Moon)[1/2]

Trance (Dark Full On), Trance 2 Comments

Artist : Various Artists
Title : Deep Fried (Compiled by Dj Shiva Moon)
Label : Rudraksh Records
Released: 2007

2007年、世界はインドよりDJ Shiva Moonがオーナーとなるニューレーベル「Rudraksh Records」が誕生。本作「Deep Fried」は記念すべき第1弾のリリースとなる。紫を基調とし、カラフルでサイバー感溢れるデザインのジャケットに、まず目を奪われる。本作は多数のアーティストをコンパイルしたV.A(Various Artists)で、ダークフルオン・クリエイター達の強烈なトラックが目白押しだ。ちなみに、コンピではあるがNon-Stop MixCDではないので、DJ用としても使える1枚となっている。

オフィシャルサイト:http://www.rudrakshrecords.com/

01. Concept - Electro Undulation

アルバムのスタートを担うのは、最近(2007年現在)2ndアルバムをリリースしたばかりのConcept。まずは挨拶程度・・・と思いきや、頭から強烈なダークフルオン・サウンドが展開してゆく。

曲のスタートと同時に、何やら不気味な環境音的パッドが飛び交う中、入り込む英語のナレーションがその雰囲気を増幅させてゆく。このナレーションの内容は、世界的に有名なヴァイオレンス・アクションゲーム「Biohazrd」に登場する、”Umbrella Corporation”という架空の企業の説明であり、曲との関連性は不明だが、興味深い演出である。(”Umbrella Corporation”の解説についてはこちら http://en.wikipedia.org/wiki/Umbrella_Corporation

ソリッドかつミニマルで、かつ深く沈み込むリズム・トラックとベースラインが、ダークな描写ながらタイトな印象をリスナーに与える。淡々と繰り返されるだけではなく、リズム・バリエーションをフィルインに代えたり、コード感を押さえつつもオクターブ幅で動いたりと、実に芸が細かい。ブレイクで聴かせる HPF(High Pass Filter)等のエフェクトの使い方も効果的で良い。

肝を握る上モノ使いも実に多彩で、序盤こそ金属的パッド+Fxでの色付けがメインだが、中盤以降ではエグいアシッド・シンセが徐々にその姿を現し、トリップ感を増幅させてゆく。ザクザクと刻まれる、ダーク系統ではおなじみのシンセリフと、パンポットを自在に操りながら空間を飛び回るアルペジオ・シンセが絡み合う展開は、王道的であり、やはり強烈なインパクトである。不安定なメロディ・ラインも特徴的だ。

アルバム1曲目ながら非常にクールなサウンド。まさに、闇への招待状といった所だろうか。

02. Phyx - Fatality

南アフリカが誇る有名レーベル(Time Code, Afrogalactic等)のコンピに、幾度となくトラックを収録してきたPhyx。ダーク・フルオン界ではトップ・クリエイターの一員と言っても過言ではなく、Randam LとShift、そしてこのPhyxとが手を組んだTwisted Systemや、TicketとのユニットBrethrenなど、別名義も掛け持つほどの存在である。

さて、そのサウンドはどうだろうか。かなり低めでドロドロとしながらも、中音のアタック感の強いシンセ・ベースが曲のキャラクターを創造してゆき、淡々と刻まれる、無機質感満点のリズム・パートがその世界を確実なものとしてゆく。冷たく、一寸先の見えない闇とは、こういったヴィジョンだろうか。

序盤からバッキングで聞かれる、付点八分ディレイのかかった減衰音シンセが、様々にパン変え、まるで虫の飛び交うような異様な雰囲気を醸し出す。所々でサンプリングされている奇妙なボイスや、メロディーとは呼べぬシンセFxなども、その雰囲気と見事にリンクしている。

3:00付近のブレイクからリフレインする、半音進行で下降するシンセ・アルペジオが、生温く、ゆったりとした空間を演出すると、この曲のメインテーマである、V度のパワーコードのリード・シンセが、4:00付近から徐々に高音から聴こえ出し、4:50付近の華麗なブレイクからエフェクトをフル開放させる。これは見事。トリップ感溢れる演出である。(同様の演出は5:45, 7:20のブレイクでも聴かれる。)

その後はこのメインテーマと、様々なシンセとが融合し合い、軽めのブレイクを挟みつつ曲は展開してゆく。8:00付近のブレイクから、序盤で聴かせたシンセが大集合し、ピークを演出するが、「パターンを使い回してる感」が否めず、曲の長さも相成って、少々ダレ気味な印象を受ける。しかし、そのサウンド・クオリティは高く、同時に個性的であり、良い意味では「どっぷり浸かれるサウンド」とも言えるだろう。

03. Tryambaka - My Black Engel

続いてポルトガル・トランスクリエイターTryambakaによる「My Black Engel」。

多数のコンピ・アルバムに楽曲を提供してきたアーティストだが、いずれもアクが強く個性的で、同時に構成が複雑であるため、一度聴いたらなかなか忘れられないトラックが多い。また、やっている事は紛れもないダークフルオン・トランスだが、曲が醸し出す雰囲気がどことなくゴシック・メタル調である事も特徴的である。

ちなみに、2007年の12月に1stアルバムをリリース予定なので、こちらも注目されたい。(詳細はオフィシャルページ:http://www.tryambaka.com/ にて。)

アタックに高音の利いたバスに、淡々と地を這うベースが絡み、曲はスタート。序盤は特に目立った動きはないものの、バックで流れているジュルジュルとしたアシッド系シンセが徐々に形を整えて姿を現し、奇妙な一体感を演出する。このシンセは全編を通して活躍。

1:35付近のブレイクからは、上モノと共にスライドするような突飛なコード進行と、それに乗る自然的短音階でゴシック色を強めてゆく。サイケデリックでありながらも、神秘的とはまた違った、虚ろげで退廃的なこの雰囲気は簡単に描けるものではなく、良い意味で大変気持ちが悪い。

4:20からは雰囲気が一転。コードを固定させ、Fxをメインの上モノに安定感・ソリッド感を前面にアピール。ゴリゴリのダーク・サイケでも十分に通用しそうなこのパートは強烈である。更に、5:15でベースをまるで低音域ギリギリまで下げるようなコードチェンジが待っており、よりドロっとした雰囲気の中で、曲のトリップ感は増幅してゆく。

このパートのブレイク後、女性ボイスをピッチシフトする手法が不安感を煽ると、加熱する曲はピークタイムへと突入。前半とは音色・アレンジの違った螺旋状のメロディーが、より一層の絶望感を描いているかのようだ。最後まで飽きさせない曲構成もさることながら、ありきたりなダーク・サウンドとは一線を画した表現は見事。今後が楽しみである。

04. Shift vs Abomination – Aftermath

南アフリカの大ベテランにして代表的クリエイターChris HoyことShift。この曲は現代ダーク・フルオンサウンドの象徴と言っても過言ではないだろう彼と、そのShift自身が運営するレーベルNexus Media所属の、同じく南アフリカ・クリエイターAbominationとの共作となっている。

意図的にかけたと思われる、不自然なオーバードライブを伴うパッド音が不快感いっぱいにイントロを飾ると、地を這うキックとベース、同時に不気味な英語のナレーションが聴こえて来る。何とこのナレーションは、映画「Underworld」で使用された台詞であり、途中で” To witness this monster’s aftermath”という台詞がある事と、曲のタイトルが連動している事を含めると、この曲のコンセプトは映画「Underworld」に焦点が置かれているのでは無いかと思われる。意味深かつ、興味深い謎掛けである。

“But William must be controlled”というナレーションから、グッと押し寄せる冷酷なベースラインと、タイトなドラムパート。上を飾る図太いリード音による定番のリフが、微妙なニュアンスの違いをちらつかせながら舞っている所に、Stab系シンセのきらびやかなテーマがリフレインし、テーマをバトンタッチさせる。これはなかなか見事な演出である。

3:10から始まる移行部では、馬のいななく声や、日本太鼓の音などがFxとしてふんだんにちりばめられており、上モノに頼りがちなキラーパート一辺倒で構成されている曲とは一味違った面白みがある。また同時に、こういった「サイレント」なパートを曲の中間に挟む事で、曲全体に締まりを与えているほか、ゾクゾクとする恐怖感と期待感、その両方を煽る働きを担っているとも言えるだろう。

5:14のブレイク後は、Stab系シンセのテーマがリフレインするが、今回はベースの動きを伴う事で、より一層の一体感をリスナーへと与えてくる。ブレイクも細かめの動きが多く、バスを1小節のみ裏打ちにするなど、純粋にカッコよく決めてくれる点も評価できるものであり、単調になりがちなリフの連続に対する良いアクセントとなっている。

その後は徐々にアシッドシンセやアルペジオを足してゆき、曲のテンションは最高潮へ。この感覚は、アプローチやメロディー・タッチこそ違うものの、90年代に盛んであったゴア・トランスの感覚に近いものがある。Shiftのベテランっぷりが垣間見えるようだ。

05. Abomination - Pusherman

続くトラックは、先述でも触れたAbomination。近年ではデヴュー・アルバム「Enemy Within」をリリースするなど、南アフリカ・トランスクリエイターの中でも精力的な活動を行っている。また本アルバムを含め、様々なレーベルのコンピに参加している事もあり、そのサウンド・クオリティは多方面から評価されているようだ。

トリッキーかつ変態的な拍子のポリ系シンセが、単音弾みでイントロを飾っている所に、ザクザクとしたディストーション・ギターの様な深い歪みの掛かったシンセが、何の前触れも無くカットインし、曲の幕が開ける。弱起によるシンセのアプローチが、トランスながらロック・テイストを醸し出しており、リズム隊の無機質感も含め、非常にクールな感覚だ。

1:35付近から徐々に顔を出すメインテーマ。アシッディーな音色と、III - IV - III の繰り返しが非常に印象的である。中盤辺りまではこのメインテーマを軸に構成されているものの、今まで不変であったベースラインが3:30付近からグルーヴィにうねり始めるという展開のほか、4:00付近でのHPFによるバス・カットを大胆に使用したアプローチなど、なかなか凝った展開を聴かせる。

4:25〜後半にかけては、テーマこそ大きな変化はないが、切れ味のいいブレイクを挟む度に重なってゆくシンセとFxが、自然と曲の高揚感を高めると、 6:13から更に激しさを増したベースラインがそれに拍車を掛け、序盤〜中盤で使用されたメイン・シンセが大集合し、まさに「混沌」としたピークタイムが創造される。曲全編に渡って疾走感が維持されている事も手伝って、強烈なトリップ感覚である。ダーク系統ならでは、といった所か。

最後は、ピッチシフトを用いてドラム音(ハイハット)をだんだんと衰退させるという風変わりな手法でフィニッシュ。

今回のコンピ収録曲の中でも、トップクラスのアグレッシヴ・ナンバーであり、明るく、開放的な雰囲気とはまた違ったダーク・フルオンサウンドの良さが濃縮されている曲だと言えよう。きめ細かな手法の数々も評価できる。