Alien Project - Activation Portal [1/2]
11月 22, 2007 Trance (Full On), Trance 1 CommentArtist: Alien Project
Title: Activation Portal
Label: H2O Records
Released: 2007
近年(2007年現在)では自身が主催するレーベル「H2O」を立ち上げるなど、イスラエリ・トランスアーティストの大御所であると同時に、様々な活動に精力を出しているAlien Project。本作「Activation Portal」はAlien Project名義での通算5作目となる。
ゴア・サイケトランスの名盤として名高い1st「Midnight Sun」の様なサウンドは影を潜めてしまったが(この方向性のシフトは賛否両論あると思われる)、安定感のあるフルオンサウンドを軸に、しっかりと自身が持つポテンシャルやオリジナリティーを進化させ、新境地を切り開いている。
01. Super Buster
アルバムのスタートを担うのは、アルバム全体のクオリティを予言しているようなキラートラック「Super Buster」。
アルバム全体を通して、オーソドックスなスタイルではあるが、レゾナンスの効いたバスドラムと、刻みの細かい上モノが疾走感を演出し、パッドシンセや軽めのアシッドシンセ、更には宙を駆け巡るようなアルペジオが絡み合い、極上のサイバー感を醸し出している。
決して生楽器では表現する事の出来ない、このスペイシーなサウンドによって、異次元へと引き込まれてゆくような感覚を覚えるであろう。実に爽快である。
曲に複雑な展開は存在せず、あくまでも曲の全体で踊らせるといった印象。前半で聴かせるテーマを中盤あたりまで引っ張り、軽めのブレイクを挟む度に、曲の表情だけを変化させてゆくスタイルだ。
中盤〜後半では、Am, C, D, F, Emの定番コード進行が特徴的で、曲そのものの開放感を引き立てている。終盤で再度、前半のテーマが登場し、曲は終了。展開の意外性の乏しさには不満が残るものの、サウンドのポテンシャル及び透明度の高さの方が際立つ為、さほど気にはならないであろう。
02. Missing Linker
「Super Buster」の雰囲気をそのまま受け継ぐ様にスタートする「Missing Linker」。
まだまだアルバム序盤であるが、容赦なくハイ・テンションなナンバーを連発させてくる。このテンションを、アルバムを通して持続させている点はさすがといった所か。
スカッとしたパーカッションから突如として押し寄せるシンセの渦。イントロから最後まで活躍する、深いディストーションのかかった、もはやギターともシンセとも区別のつかないパワーコード・リフが、純粋な「カッコよさ」を演出している。
細かく刻まれるシンセベースと、野太いキックが地を駆け巡る中、曲は徐々にアッパーな展開へと導かれてゆく。中盤〜ピークタイムに登場する、アシッド感強めの高速アルペジオや、極限まで歪ませたボイスサンプリングなど、実に様々な上モノシンセが登場するが、これは「聴かせる」といった感じの類ではなく、「自由に遊んでいる」といった印象を受ける。躍動感溢れる演出の数々に、自然と高揚感も増してくるようだ。
また、かなり異質ではあるが、1曲を通して全くコードを変えないという、実にストレートな構成を持った曲であり、キャッチーな印象をリスナーに与えていると言えるだろう。ただしその反面、音楽的な物足りなさが否めない事も事実である。
03. N.R.G
続く「N.R.G」は、アルバムの中でも爆発的なパワーを持った曲だと言えるだろう。
それこそ王道的なフルオン/サイケデリックスタイルではあるが、曲全般に渡って登場する、レゾナンスの効いた金属的なシンセがリスナーに無機質感、及びクール感を与えつつ、1:30付近、3:30付近のブレイクから一気にリフレインするアルペジオが、見事なまでの高揚感を演出している。
特にアルペジオに関しては、「Bb A G」や「Bb G」などのフレーズをひたすら繰り返すという、一見単純なものであるにも関らず、攻撃的な4つ打ちビートの上を華麗に泳ぎ、曲に対してより一層の疾走感を与えている絶品である。また、リフレインする直前のブレイクのタイミングも絶妙だ。ピークの主役を担うには十分なインパクトを兼ね備えていると言えるだろう。
曲単体のテーマや雰囲気こそ大きな変化は見せないが、次々に重なってゆく、序盤〜中盤のシンセの豊富さだったり、ピーク後、シンセのバリエーションを一新させて、新たな展開に切り替えるなど、数々の聴き所が存在する曲でもある。ストレートな表現の中にもやはり、Alien Projectのセンスが滲み出ているようだ。
04. Tewaky(Remix)
タイトルを見て、もしくはイントロを聴いてニヤリとしてしまった方も多いのではないだろうか。この曲は、言わずと知れたPsytrance界のビッグネームAstrixの2ndアルバム、「Artcore」収録の「Tewaky」をRemixしたものである。
Remixと言っても、曲のイメージを大幅に修正したようなものではなく、あくまでも原曲に対して忠実であり、Alien Project自身が、可能な範囲での色付けを行う事で、一味違った「Tewaky」を生み出している、といった感じである。一概に甲乙を付けてしまえるようなものではないので、聴き比べてみる事をお勧めしたい。
曲は、広がりのある低音パッドに乗せた、期待感溢れるイントロからスタート。アルバムを通して一貫性のあるシンセベースとキックの絡みが安定感をリスナーに与えている。
特徴的なのは、ベース音・バッキングでIII、もしくはbIII音を鳴らさずに、上モノでコード感を表現する「分離法」を使用している事である。上モノのバリエーション1つで曲の表情がガラリと変わってしまう手法なので、曲の緊張感の高さが聴いて取れる事だろう。
また、「NRG」と同じく、ブレイクを挟んでリフレインするアルペジオも聴き所だ。リフレインする直前のアシッドシンセによるテーマは原曲と全く一緒だが、このアルペジオの登場、及びコードを動かす(bAm×3小節, E, bG半小節ずつ)事によって、ポジティブ感に溢れる「Alien Project的」なピークタイムを創造している。これは見事。Remixの面白みが十分に味わえる力作である。
05. Deeper
続く「Deeper」は、アルバム収録曲唯一の「歌モノ」で、タイトルからも連想できるように、まるで深い海の中を優雅に泳いでいるかのような、雄大なテーマが特徴的な曲である。
前半から中盤にかけて、FXもしくは女性ボーカルに長めのディレイをかけた継続音的パートを、ややゆったりめのBPMに乗せる事で、浮遊感とテンション感を同時に演出し、展開バリエーションを多めに展開させてゆく。
その他のシンセの登場は最小限に抑えてあるものの、単音(one shot)も数多く見られるなど、バリエーションの多さが際立っており、明らかに、これまでのサウンドとは違ったアプローチで構成された曲だと言えるだろう。
中盤のフルオンパートがブレイクすると、またもや海の底へと連れていかれそうなパッドシンセが広がり、曲の「肝」であるボーカルトラックを軸に、シンセ・バリエーション・パートが「裏メロ」となって、絶妙な「掛け合い」を披露。曲は一気に加速するかのごとくピークタイムへと突入する。
胸を熱くさせるボーカルに、情熱溢れるコード進行が相まって、盛り上がりは頂点へ。アグレッシヴ一辺倒だけでは決して表現する事の出来ない、モーニングスタイルの醍醐味を堪能できる名曲だ。リスナーに隙を与えない曲構成も見事である。
