Hypersonic - Access Denied [2/2]

6:31 pm Trance (Full On), Trance (Psychedelic), Trance

06. Day Light

続く「Day Light」は、タイトルが物語るかのようなフルオン全開の爽快サウンド。

このアルバムの各曲には、サイケトランス特有の不穏なテーマや、胸を締め付けるかのような叙情的メロディーが確かに存在しているものの、この曲を聴くと常々、Hypersonicのアプローチする全体のテーマは「ポジティブ」なんだなと思えてしまう。皆が腕を高々に掲げ、一斉にジャンプしているようなヴィジョンが透けて見えるサウンドは、聴いていて実に感情が豊かになってくる。

曲はイントロから最後まで活躍するメインメロディーが特徴的。様々なテーマが飛び交う中スタートする前半で「おっ」と思ったリスナーも多いのではないだろうか。キックのピッチが高く、ベースのうねりも手伝ってか、やけに「アタックが強い感」を感じさせる。さらにボーカルトラックも他の曲と比較すると多めで、多彩かつ複雑な構成で聴かせるタイプの曲ではなく、ストレートな表現でこそ成り立つ「盛り上がり」を重点に置いている曲だと言えそうだ。

入り乱れるアシッド感溢れるシンセが数々のテーマを生み出し、中盤からはボーカルテーマが全面に押し出され、よりアッパーなサウンドへと展開。後半雰囲気が一転、地鳴りのような歪み系シンセベースに支えられた縦ノリ感のあるテーマで幕を閉じる。今まで各曲に存在していたピークタイムらしきものは見当たらないが、決して不満が残る内容では無い。どちらかというと1stの「Freedom」に近いノリであるとも言えるだろう。

07. Night Life

悲しげなイントロアルペジオに雄大なギターが絡みつき、今までにないほどの静けさに包まれ曲がスタートする「Night Life」。一曲前の「Day Light」とは曲が持つ雰囲気はおろか、タイトルまでもが正反対のナンバーだと言って良いだろう。

曲の前半は特に際立った特徴も無いまま、「面白みの無い」ビートでスタートするが、そこに意図的にピッチをずらしたストリング・サンプリングの滑稽なメロティーが登場し、曲は一転、ディストーションギターをバックにしたフルオンサウンドを展開する。

しかし休む間もなく曲はまたまた一転。タイトルからは想像できない程のコミカルなシンセが飛び交うパートへと移行。テーマはもちろん、コードの移り変りも安定したものではなく、一歩先の展開が見えない奇妙な感覚を覚える。

そしてブレイクを挟み、「待ってました!」といわんばかりのゴリゴリとしたアシッドシンセが徐々にその姿を現し、一気に過熱度を加速させ、爆発的なピークタイムへと突入する。「お得意」のカッティング・シンセの上に、高音&高速アルペジオが強烈に駆け巡るこのサウンドは非常に強烈だ。もはや前半〜中盤までの「味気ない」雰囲気は皆無である。

そしてイントロで聴かせた静けさの漂うアルペジオで曲は終了。特定のテーマを全面に押し出した「Day Light」の後に、これだけ対極した曲を持ってくるHypersonicのセンスにも注目されたい。

08. Disco Mania

まるで夜が明けたかの様な、はたまた夜のクラブパーティがいつまでも続いている様な雰囲気が全体を包み込む「Disco Mania」。キラキラと輝くミラーボールが良く似合いそうな一曲である。

リッチで壮大なパッド音に乗せたブライトシンセが美しいイントロから曲はスタート。アシッド感を極力抑えた綺麗モノのシンセで色鮮やかに曲は展開してゆく。まさにディスコナンバーとなりそうな、良い意味で古臭いテーマの連続にニヤリとさせられる。

中盤は軽いブレイクを挟み、メインテーマとなるアルペジオが鳴り響く中、コード感を極力抑えたアシッドなパートへと展開する。ラップボーカルまで飛び出すアッパーなサウンドではあるが、実にストレートかつ自然な構成であり、これまでの曲展開とは一味違った面白みがある。

しかし、それだけで終わらないのがHypersonic。曲は前半の雰囲気をそのまま残しながらブレイクし、宙を舞うような、澄み渡るピアノのイントロがリフレイン。胸を熱くさせるその音色からいきなりディストーション・シンセが登場。お得意の「エグい」リフが前半のテーマと激しく絡み合い、混ざりながら絶頂のピークタイムへ突入する。正にサイケとディスコサウンドの融合である。アシッド系統のシンセを全面に押し出していた、各曲のピークタイムとは異なる方法論で、更に更にと曲のポテンシャルがグレードアップしてゆくサウンドだと表現できるだろう。

そして再度登場するピアノイントロが終盤を飾り、曲は幕を閉じる。サイケトランスとしては個性的かつ実験的な曲にあたると思うが、型崩れになってない点は評価すべき所だろう。ただし、綺麗すぎるテーマが全体を占め、更にアシッドシンセの登場も少なめなので、粋なサイケファンには少々物足りない面もあるかもしれない。

09. Start Again

最後を飾るのはアルバム唯一のダウンビートナンバー「Start Again」。

近年、サイケトランスシーンでは、ライヴやパーティの後に流れる、Chillout的要素を含めた「歌モノ」が増加している。(もちろん、ライヴ中に披露する事も多々ある。)この曲もその風潮からか。音楽的には退屈な曲だが、CDのラストといった点を考えると自然な流れではある。

Aメロのラップ、中盤登場するシンセリフが特徴的。覚えやすいサビはパーティでの大合唱が期待できそうだ。Infected Mushroomの「I Wish」を意識したと考えられなくもないが、構成は酷似しているものの、この「Start Again」は、お得意のアラビア音階が絡んでいるため、特有の個性はアピールできているように思う。タイトルがHypersonicの今後の活動を比喩しているかのようだ。

総括

とにかく一曲一曲での展開の豊富さが何よりものHypersonicの「魅力」ではないだろうか。

そこに絡んでくるアラビア音階もまた良い味を出しているし、曲構成は複雑なものの、しっかりとピークタイムでアゲてくれる事にも安心感を覚える。そして何よりその展開の速さ、豊富さにより、「また聴きたい」もしくは「聴き込みたい」といった欲求が出てくる点は、評価できる所だと思う。

また、音質そのものも他のフルオン系統のアーティストに比べると個性的で、チューニング高めの歯切れのよいドラム音が、全体的に締まった感じを演出している。1stの「Freedom」ではそこまで印象的ではなかったが、ここにきてHypersonicの音の好みが全開に出ているように思える。ただ、それが狙いなのかも知れないが、全体的に音像の奥行が不足しているのは少々残念であった。

多数のイスラエリ・トランスアーティストが切磋琢磨している中、Hypersonicのように、しっかりと「芸」のあるアーティストが今後どのような活動を見せてゆくかが非常に楽しみであると同時に、そんな期待にしっかりと応えてくれる「Access Denied」であった。

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