Hypersonic - Access Denied [1/2]

Trance (Full On), Trance (Psychedelic), Trance 4 Comments

Artist: Hypersonic
Title: Access Denied
Label: Phonokol Records
Released: July 2007

01. Suicide

1st Album「Freedom」のヒットが記憶に新しいイスラエリ・フルオン期待の新星Hypersonicが放つ本作「Access Denied」。

1曲目は、意味深なタイトルが付けられた「Suicide」で幕が開ける。

優しくも憂鬱さが漂うアルペジオから始まり、なんともコミカルな表情をしたアシッドシンセが耳に飛び込んできたかと思えば、2:30付近で突然スイング調拍子へとシフトチェンジし、ブレイクを挟んでギターリフ全開のフルオンモードへ。息もつかせぬ程の展開に、彼らが持つオリジナリティとセンスが垣間見えるようだ。

しかし、Hypersonicが持つオリジナリティはこのポイントだけに限らない。これはアルバム全体を通して言える事だが、上モノを飾るメロディーはアラビア音階の影響が強く表れているし、レゾナンスの効いたリードシンセは、彼らならではの「クセ」を演出しているようにも思う。ただ単に奇麗なだけでもなく、アグレッシヴに攻め立てるだけでもない、良い意味での「気持ち悪さ」や「怪しさ」が「Hypersonicのオリジナリティ」とも言えるだろう。聴いていて実に爽快だ。

曲のレヴューに戻ろう。ギターリフが炸裂したところで、イントロのアルペジオを挟み、一気に曲はエネルギーを解放するかのように、アシッドリフ、アシッドシンセ全開のピークタイムへ。アルバム1曲目ながら、非常に凝った曲構成にノックアウト必至である。

そして、再度イントロのアルペジオが流れ、曲の終焉と共にアルバムの幕が開ける。この不穏なアルペジオと、曲のタイトルが「期待感」を醸し出しているかのようだ。

02. Plug & Play

続く「Plug & Play」。ここでも「Hypersonic節」が全開である。

イントロの特徴的な和声的短音階が不安感を煽るものの、曲は一転してアコースティックギターをかき鳴らすと云う斬新なトラックへ続く。トランスというものを根本にしっかり持ちつつも、ディスコ調のダンサブルなこのパートには正直驚いた。

しかし、そんな感覚もつかの間。軽いブレイクを挟み、ポリ系のシンセをリードとした、コードチェンジの激しいパートへと展開する。相変わらず凄い展開の早さだ。この情報量、技術量の豊富さは並ではない。

ここでもアラビア調の音階が全面に押し出されており、どこか哀愁漂うメロディが頭の中を駆け巡る。時に情熱的ですらあるこのメロディには、胸を熱く躍らせる魅力があり、単に「ダンス」といった概念だけでは得られない高揚感があるように感じた。前半で見せたアコースティックギターでもそうだが、ほとんどが打ち込みによる音なのにも関わらず、この曲には「生」っぽさが影を潜めているようにも思う。

しかし、テーマパートおよびテーマを目まぐるしく展開してゆく事により、一定の雰囲気を残さない表現が、結果として不安定感・無機質感を増強し、曲そのものの輪郭を引締め直している。曲後半はあれだけ移り変わっていたコードチェンジを抑え、安定感を取り戻しつつ、サイケデリックかつアッパーなフルオンパートへと移行する。実に聴き応えのある曲構成だ。

03. Access Denied

3曲目はアルバムタイトルともなっている「Access Denied」。

この曲の面白みは、なんと言っても中盤と後半に顔を見せるゴリゴリとしたエレキベースとディストーションギターの存在だろう。このパートは従来のフルオンにありきだった、「あくまでも盛り上げる為のギタートラック」とは趣向が違い、もろにHR/HMの要素が飛び出している。実験的ではあるが、そのインパクトの大きさが曲単体の面白みを更に引き出している事は明確だ。

前半からキレイ目の上モノのパート数を最小限に抑え、テーマを強調してゆく実にアグレッシヴな展開である。比較的シンプルなベースリフが安定感を聴かせる中、徐々に重なってゆくアシッドシンセが絡みつき、これまでにない不穏感をリスナーに与える表現だ。このままピークタイムに突入してもなんら不思議ではないのだが、ここで見事に曲は豹変し、上記のディストーショントラックが耳に飛び込んでくる。「Access Denied!」というタイトルコールが期待感を煽る中、再び曲は一変し、ブライトシンセが空を泳ぐパートへ。

一体この展開は何を狙っているのだろうか。約8〜32小節を単位としてテーマが変わる度に、パートやリズムを含めた構成全てが入れ替わる、この信じがたい展開バリエーションは、明らかにアルバムの中でも異質であると同時に、存在感をアピールしているようにも感じとれる。

(ここからは個人的解釈だが、曲のタイトルを直訳すると、「アクセスが拒否されました」となる。つまり「閲覧するにはパスが必要」となるわけだ。この意味合いを考えると、上記で挙げたタイトルコールを繰り返す中盤の印象的なディストーショントラックには、警報音のようなシンセが織り交ぜられていることもあり、「何かを得てしてでしか聴くことのできないパートを意図的に隠している」と考えられるのではないだろうか。)

そして後半はポリシンセを際立たせ、一気に加速するようにピークタイムへ。繰り返されるリフが徐々に音数を増してゆく、ダンスフロアを揺るがすような強烈なピークタイムだ。これぞサイケトランスの醍醐味である。

04. I Can Feel It

続く「I Can Feel It」。このあたりからアルバムの展開そのものがアグレッシヴな方向へと向かってゆく。これはライヴ感を強く意識して作られたものだと思うが、サイケトランスでは定番の方法論ながらも、その無理のない自然な繋がりには、Hypersonicの豊富な経験が生かされているように思う。本作を聴く上で重要なファクターの一つだ。

さてこの「I Can Feel It」だが、前半は定番のレゾナンス+ピッチベンドの効いたハードシンセを中心としたテーマで攻め立ててゆくものの、これまでの展開のめまぐるしさは影を潜め、中盤以降に登場する印象的なボーカルを軸とした様々なパートで、「バリエーションを変えながら同じテーマを演奏する手法」を聴かせ、より一層の安定感と疾走感を醸し出している。音を足したり、引いたりと表情豊かな印象だ。

「I Can Feel It!」と繰り返されるボーカルパートが躍動感溢れるリズムの上で踊る中、お得意のアラビア音階シンセが怪しい雰囲気を色付けるように飛び回る。このドライヴ感溢れるテーマを後半直前まで引っ張り、後半はブレイクを挟み徐々にコードアップさせ、またまたフロア直撃型の強烈なピークタイムへと突入。マイナー・コードの構成音をフルに鳴らした細かい高音アルペジオが、リスナーの高揚感を極限まで引き上げる。その後、エレキギターのフィードバックを再現したようなメロウなシンセでピークタイムの余韻を残しつつ曲は終了。「盛り上がり」といった点において、この曲は圧巻だと言っても良いだろう。

ただその一方で、アルバム収録曲の中では、比較的展開が少ない曲でもあり、音楽としての意外性やエンターテイメント性が損なわれていると考える事もできる。良い意味で捉えればストレートかつタイトな表現だが、もう少しアクセント的要素を追加してもマイナスポイントにはならなかったであろうと思われる。

05. Dramatic Combo

「I Can Feel It」の流れをそのまま受け継ぐようにスタートする「Dramatic Combo」。

とにかく中盤の懐古感漂うマイナー調シンセ・メロディーのユニゾンが耳に残る。このユニゾンのせいもあってか、曲の全体像としては、他のアルバム収録曲(M-9「Start Again」を除く)とは一風変わったサウンドを演出しているように感じた。

前半から9th, 11thの構成音を強調したストレートなマイナー・コードに乗せたテーマが全面に押し出され、(アッパーではあるけれども)どこか緩やかな音の流れに身を委ねているような印象を受ける。奥行があるとも言えるだろうか。

そのヴィジョンを受け継ぐように中盤のメインテーマが顔を出す。展開の多いHypersonicだけに、最初にこのメロディーラインを聴いた時はすぐに別のテーマにバトンを渡すかと思ったのだが、これに限ってはスタート(3:15付近)からブレイク(4:50付近)まで56小節と、同じテーマを長めに引っ張っている。とは言っても、決して「くどい」といった感覚には陥らないだろう。最初はシンプルかつ虚ろな印象を与えるものの、次第に音数を増してゆき、 40小節目あたりからは同じメロディーラインにも関わらず、フルオン全開のエネルギッシュなパートへと「ドラマティックに」変貌する。これは見事。展開の多さだけがウリではない事を、リスナーへ強くアピールしているかのようだ。

続く後半は、この雰囲気からなだれ込むようにピークタイムへ。より一層のエネルギーを解放するかのごとく炸裂するフルオンサウンドには思わず踊らされてしまう。音数が多い反面、音色・構成音共に垢抜けた感のあるアルペジオが反復するため、聴いていて実に心地よい。前半のマイナー調から、ラストのピークタイムの開放感まで、隙を与えずにドライヴする展開はさすがと言えるだろう。