Alien Project - Activation Portal [2/2]

Trance (Full On), Trance 2 Comments

06. Activation Portal

アルバムタイトルともなっている「Activation Portal」。

音色にクセの少ないGated Synthを多用した王道的なスタートを切るも、アルバム前半の曲と比較すると、穏やかなサウンドといった印象を受ける。曲の序盤で時折入り込むノイズ寄りのシンセや、深いディレイの掛けられたボイスパッドなどは、ほどよいアクセントといった所であろうか。アルバム前半で聴かせたシンセ使いとは違い、強烈なキャラクターを生み出すものではない。

中盤からは徐々にアッパーな方向へとシフトしてゆく。テーマは終始一定なものを聴かせるが、ブレイクを挟む毎に、ゴリゴリとしたシンセが次第に前面へと押し出され、ベースラインとユニゾンするかの如くリンクし、ブライトシンセが映えていた序盤〜中盤とは全く違ったサウンドを展開してゆく。これと同時にコードも動くため、自然とリスナーの期待感、高揚感も高まるようだ。

終盤は引き算的にパートを減らし、クールダウンして終了。実に安定したサウンドではあるが、曲構成としては平凡であり、タイトル曲である事も含めて、物足りなさは否めない感がある。

07. Get Up

ポジティブ感に溢れるアグレッシヴナンバー「Get Up」。アルバムの後半であるが、曲のテンションは衰える事なく続いてゆく。

スタートから空間いっぱいに広がってゆくシンセが印象的だ。アシッド色を抑えた、レゾナンスは強いが柔らかみのある音色である。ベースやキックは他の曲と比較しても、そう代わり映えしないが、アクティブに操られる上モノをしっかりと支えつつ、芯のあるサウンドをドライヴしており、ここでも安定感は抜群だと言えるだろう。

「So Get Up!」のタイトルコールを曲全般に渡って効果的に使用し、「アゲ」のポイントを巧みにリードしている点もポイントだ。超ディープなディレイ+リバーブが加わっているため、存在感も十分にアピールできるものがある。3:45付近のブレイクから多用され、ピークタイムまでの期待感を煽る手法で、ライヴ感を演出している点も記しておきたい。

また、表情豊かに変化する短音アルペジオはもちろん、付点8分音符の長さを基準としたシンセのアーティキュレーションを強調するなど、なかなか凝った「上モノ使い」を披露してくれる曲でもある。

08. Groovy (Remix)

T.I.P(The Infinity Project)Worldのオーナーであると同時に、40年以上にも渡って音楽活動を続けてきたサイケシーンのドンことRaja Ram。この「Groovy」は彼とAlien Projectととのコラボであり、前作「Don’t Worry Be Groovy!」にも収録されていた曲であるが、今回はRemixという形で再収録。ビッグネームとのタッグだけに、パワフルなフルオンサウンドが遺憾なく繰り出されてゆく。

カットオフ周波数を徐々に変化させる手法で、じわじわとキックの音色が太くなってゆくイントロからスタート。そこに飛び込んでくる動きの激しいベースラインは、正に「グルーヴィ」。bIII音やbVII音を経由しコード感を印象づけている。

そして「やはりRaja Ram」スタイルといった所だろうか。付点八分のディレイおよびゲーティングとともに展開されるエレキギターのパワーコードが強烈な存在感を放っている。ブレイクと共に「Groovy?」のボイスサンプリングが顔を出し、オープンハイハットとAlien Projectお得意のアルペジオ、そしてRaja Ramのギターが一気にスパークする展開。思いっきり爽快なパートの連続に、リスナーはノックアウト必至である。

頻繁なブレイクを介して展開するバリエーション、組み合わせの多さも特徴的だ。3:45付近でリフレインする、ブライト系シンセによるアルペジオ、同じく 6:10付近でリフレインする、アシッド系シンセによるアルペジオは、それぞれ表情が違っていて実に面白い。このあたりがAlien Projectの「職人芸」だと言って良いだろう。

決してRaja Ramに頼りすぎる事なく、互いのセンスを見事なまでに融合させ、オリジナリティ溢れるサウンドに仕上がっている名曲だ。アルバムの流れも兼ねてポジティブに楽しみたい。

09. Yellow Blaze

いきいきとドライヴされる、パワフルかつソリッドなバッキングパートの上に、綺麗なテーマが曲全般を駆け巡るモーニングナンバー「Yellow Blaze」。クリーンと歪みの対比が実に美しい曲だ。

イントロからポリ系のシンセが溢れ出し、モーニングの肝である浮遊感を演出すると、息をつく暇も無く、レゾナンス周波数の変化を伴う歪み系シンセが登場。疾走感に溢れ、曲にほどよい緊張感を与える、重要かつ「カッコいい」パートである。

1:20付近のブレイクから序盤のテーマフレーズ(bA G bE 〜)がリフレイン。響き渡るそのフレーズは、ここからコードに動きが与えられる事も手伝って、安心感のある、心地よい空間を演出している。

中盤では「bA B C bE」のスケール・トーンで構成されたテーマが繰り返され、より一層の高揚感を与える中、曲はブレイク。徐々に加速し、雲を突き抜けてゆくかのごとく、一気にピークへと突入する。ロックテイスト溢れるバッキングの上に、様々なシンセが飛び交うその様子は、フロアやミッドナイトの野外で、様々な光が交差しているかのようだ。

後半にかけ、ポリ系・歪み系シンセとが絡み合い、曲はクールダウンへ。アルバム収録曲の中では、構成・展開共に満足のいく内容。耳に馴染みやすいテーマの存在も良い味を出している。

10. Aztechno Dream (Shanti rmx)

ラストを飾る「Aztechno Dream (Shanti rmx)」。原曲はAlien Projectの3rdアルバムに収録されていたものだが、「A Machine’s Dream」などのアルバムで有名なShantiがRemixを手掛け、再収録となっている。クレジットには記されていないが、ボーナストラック的要素が強いものだと考えられる。(楽曲自体は良質であり、「おまけ」として扱うものではない。)

イントロから不穏な空気が立ち込める中に、ノスタルジックなテンション・コードが登場。これはbIIの半音進行を取り入れたもので、ゴアトランス全盛期のような、不安定感を醸し出すサウンドである。中盤から後半にかけてのピーク直前でも再度リフレインする。

明らかにこれまでの音色とは違う、ボトムの太いリズムトラックがスタートすると同時に、美しくも妖しいm7th系テンション・コードによるアルペジオが繰り出され、空間の広がりを演出する。曲の雰囲気が一定せず、目まぐるしい展開だ。

中盤以降ではよりダークかつヘヴィーとなったリズム隊に乗せて、前半のアルペジオを含めた様々なテーマが展開されてゆく。アシッドシンセの入れ替わりは激しいが、決して「やりすぎ感」はなく、あくまでも色付け程度のものである。

そして後半、メインテーマは徐々にエグいシンセFXに取って代わり、サイケ感を倍増させてゆく。ただでさえ骨太のサウンドに、エッジの効いたこの上モノがじわじわと乗ってくるため、かなり緊張感が高いサウンドだと言えよう。ラストはその勢いを残したまま、シンセの渦に飲まれるかの如く曲は終了。

これまで一貫してポジティブな表現であったアルバム収録曲とは、一線を画したサウンドであるが、オールドスタイルと現代のフルオンの見事な融合は、聴き応え十分であると言えるだろう。

まとめ

全体を通して一貫したポジティブなサウンドが魅力である。また、リミックス陣(04.Tweaky 08.Groovy 10.Aztechno Dream)が良いポジションで収録されているため、アルバムの流れとして「飽きさせない」作りとなっているのは流石といった所か。前半の鍵を握る「N.R.G」や、歌モノを取り入れた「Deeper」の存在も同時に大きい。

音質面では、極端に良いとは言えないが、少し霧がかったような独自のクセがある音で、曲に対しても言える「スペイシー感」を演出させている(10.Azetchno Dreamは例外)。良く言えば、中高音の際立った煌びやかなサウンドだが、欲を言えば、リズム隊にもう少しパンチが欲しかったとも思う。

良くも悪くも進化を続ける「現代」のフルオン・サイケシーンを象徴する今作「Activation Portal」。初期とはサウンドカラーが異なっているため、戸惑う方もいるかも知れないが、逆に、これだけ進化を続けるAlien Projectのようなクリエイターは、次回作が楽しみだとも考えられるだろう。

Alien Project - Activation Portal [1/2]

Trance (Full On), Trance 1 Comment

Artist: Alien Project
Title: Activation Portal
Label: H2O Records
Released: 2007

近年(2007年現在)では自身が主催するレーベル「H2O」を立ち上げるなど、イスラエリ・トランスアーティストの大御所であると同時に、様々な活動に精力を出しているAlien Project。本作「Activation Portal」はAlien Project名義での通算5作目となる。

ゴア・サイケトランスの名盤として名高い1st「Midnight Sun」の様なサウンドは影を潜めてしまったが(この方向性のシフトは賛否両論あると思われる)、安定感のあるフルオンサウンドを軸に、しっかりと自身が持つポテンシャルやオリジナリティーを進化させ、新境地を切り開いている。

01. Super Buster

アルバムのスタートを担うのは、アルバム全体のクオリティを予言しているようなキラートラック「Super Buster」。

アルバム全体を通して、オーソドックスなスタイルではあるが、レゾナンスの効いたバスドラムと、刻みの細かい上モノが疾走感を演出し、パッドシンセや軽めのアシッドシンセ、更には宙を駆け巡るようなアルペジオが絡み合い、極上のサイバー感を醸し出している。

決して生楽器では表現する事の出来ない、このスペイシーなサウンドによって、異次元へと引き込まれてゆくような感覚を覚えるであろう。実に爽快である。

曲に複雑な展開は存在せず、あくまでも曲の全体で踊らせるといった印象。前半で聴かせるテーマを中盤あたりまで引っ張り、軽めのブレイクを挟む度に、曲の表情だけを変化させてゆくスタイルだ。

中盤〜後半では、Am, C, D, F, Emの定番コード進行が特徴的で、曲そのものの開放感を引き立てている。終盤で再度、前半のテーマが登場し、曲は終了。展開の意外性の乏しさには不満が残るものの、サウンドのポテンシャル及び透明度の高さの方が際立つ為、さほど気にはならないであろう。

02. Missing Linker

「Super Buster」の雰囲気をそのまま受け継ぐ様にスタートする「Missing Linker」。

まだまだアルバム序盤であるが、容赦なくハイ・テンションなナンバーを連発させてくる。このテンションを、アルバムを通して持続させている点はさすがといった所か。

スカッとしたパーカッションから突如として押し寄せるシンセの渦。イントロから最後まで活躍する、深いディストーションのかかった、もはやギターともシンセとも区別のつかないパワーコード・リフが、純粋な「カッコよさ」を演出している。

細かく刻まれるシンセベースと、野太いキックが地を駆け巡る中、曲は徐々にアッパーな展開へと導かれてゆく。中盤〜ピークタイムに登場する、アシッド感強めの高速アルペジオや、極限まで歪ませたボイスサンプリングなど、実に様々な上モノシンセが登場するが、これは「聴かせる」といった感じの類ではなく、「自由に遊んでいる」といった印象を受ける。躍動感溢れる演出の数々に、自然と高揚感も増してくるようだ。

また、かなり異質ではあるが、1曲を通して全くコードを変えないという、実にストレートな構成を持った曲であり、キャッチーな印象をリスナーに与えていると言えるだろう。ただしその反面、音楽的な物足りなさが否めない事も事実である。

03. N.R.G

続く「N.R.G」は、アルバムの中でも爆発的なパワーを持った曲だと言えるだろう。

それこそ王道的なフルオン/サイケデリックスタイルではあるが、曲全般に渡って登場する、レゾナンスの効いた金属的なシンセがリスナーに無機質感、及びクール感を与えつつ、1:30付近、3:30付近のブレイクから一気にリフレインするアルペジオが、見事なまでの高揚感を演出している。

特にアルペジオに関しては、「Bb A G」や「Bb G」などのフレーズをひたすら繰り返すという、一見単純なものであるにも関らず、攻撃的な4つ打ちビートの上を華麗に泳ぎ、曲に対してより一層の疾走感を与えている絶品である。また、リフレインする直前のブレイクのタイミングも絶妙だ。ピークの主役を担うには十分なインパクトを兼ね備えていると言えるだろう。

曲単体のテーマや雰囲気こそ大きな変化は見せないが、次々に重なってゆく、序盤〜中盤のシンセの豊富さだったり、ピーク後、シンセのバリエーションを一新させて、新たな展開に切り替えるなど、数々の聴き所が存在する曲でもある。ストレートな表現の中にもやはり、Alien Projectのセンスが滲み出ているようだ。

04. Tewaky(Remix)

タイトルを見て、もしくはイントロを聴いてニヤリとしてしまった方も多いのではないだろうか。この曲は、言わずと知れたPsytrance界のビッグネームAstrixの2ndアルバム、「Artcore」収録の「Tewaky」をRemixしたものである。

Remixと言っても、曲のイメージを大幅に修正したようなものではなく、あくまでも原曲に対して忠実であり、Alien Project自身が、可能な範囲での色付けを行う事で、一味違った「Tewaky」を生み出している、といった感じである。一概に甲乙を付けてしまえるようなものではないので、聴き比べてみる事をお勧めしたい。

曲は、広がりのある低音パッドに乗せた、期待感溢れるイントロからスタート。アルバムを通して一貫性のあるシンセベースとキックの絡みが安定感をリスナーに与えている。

特徴的なのは、ベース音・バッキングでIII、もしくはbIII音を鳴らさずに、上モノでコード感を表現する「分離法」を使用している事である。上モノのバリエーション1つで曲の表情がガラリと変わってしまう手法なので、曲の緊張感の高さが聴いて取れる事だろう。

また、「NRG」と同じく、ブレイクを挟んでリフレインするアルペジオも聴き所だ。リフレインする直前のアシッドシンセによるテーマは原曲と全く一緒だが、このアルペジオの登場、及びコードを動かす(bAm×3小節, E, bG半小節ずつ)事によって、ポジティブ感に溢れる「Alien Project的」なピークタイムを創造している。これは見事。Remixの面白みが十分に味わえる力作である。

05. Deeper

続く「Deeper」は、アルバム収録曲唯一の「歌モノ」で、タイトルからも連想できるように、まるで深い海の中を優雅に泳いでいるかのような、雄大なテーマが特徴的な曲である。

前半から中盤にかけて、FXもしくは女性ボーカルに長めのディレイをかけた継続音的パートを、ややゆったりめのBPMに乗せる事で、浮遊感とテンション感を同時に演出し、展開バリエーションを多めに展開させてゆく。

その他のシンセの登場は最小限に抑えてあるものの、単音(one shot)も数多く見られるなど、バリエーションの多さが際立っており、明らかに、これまでのサウンドとは違ったアプローチで構成された曲だと言えるだろう。

中盤のフルオンパートがブレイクすると、またもや海の底へと連れていかれそうなパッドシンセが広がり、曲の「肝」であるボーカルトラックを軸に、シンセ・バリエーション・パートが「裏メロ」となって、絶妙な「掛け合い」を披露。曲は一気に加速するかのごとくピークタイムへと突入する。

胸を熱くさせるボーカルに、情熱溢れるコード進行が相まって、盛り上がりは頂点へ。アグレッシヴ一辺倒だけでは決して表現する事の出来ない、モーニングスタイルの醍醐味を堪能できる名曲だ。リスナーに隙を与えない曲構成も見事である。

Hypersonic - Access Denied [2/2]

Trance (Full On), Trance (Psychedelic), Trance No Comments

06. Day Light

続く「Day Light」は、タイトルが物語るかのようなフルオン全開の爽快サウンド。

このアルバムの各曲には、サイケトランス特有の不穏なテーマや、胸を締め付けるかのような叙情的メロディーが確かに存在しているものの、この曲を聴くと常々、Hypersonicのアプローチする全体のテーマは「ポジティブ」なんだなと思えてしまう。皆が腕を高々に掲げ、一斉にジャンプしているようなヴィジョンが透けて見えるサウンドは、聴いていて実に感情が豊かになってくる。

曲はイントロから最後まで活躍するメインメロディーが特徴的。様々なテーマが飛び交う中スタートする前半で「おっ」と思ったリスナーも多いのではないだろうか。キックのピッチが高く、ベースのうねりも手伝ってか、やけに「アタックが強い感」を感じさせる。さらにボーカルトラックも他の曲と比較すると多めで、多彩かつ複雑な構成で聴かせるタイプの曲ではなく、ストレートな表現でこそ成り立つ「盛り上がり」を重点に置いている曲だと言えそうだ。

入り乱れるアシッド感溢れるシンセが数々のテーマを生み出し、中盤からはボーカルテーマが全面に押し出され、よりアッパーなサウンドへと展開。後半雰囲気が一転、地鳴りのような歪み系シンセベースに支えられた縦ノリ感のあるテーマで幕を閉じる。今まで各曲に存在していたピークタイムらしきものは見当たらないが、決して不満が残る内容では無い。どちらかというと1stの「Freedom」に近いノリであるとも言えるだろう。

07. Night Life

悲しげなイントロアルペジオに雄大なギターが絡みつき、今までにないほどの静けさに包まれ曲がスタートする「Night Life」。一曲前の「Day Light」とは曲が持つ雰囲気はおろか、タイトルまでもが正反対のナンバーだと言って良いだろう。

曲の前半は特に際立った特徴も無いまま、「面白みの無い」ビートでスタートするが、そこに意図的にピッチをずらしたストリング・サンプリングの滑稽なメロティーが登場し、曲は一転、ディストーションギターをバックにしたフルオンサウンドを展開する。

しかし休む間もなく曲はまたまた一転。タイトルからは想像できない程のコミカルなシンセが飛び交うパートへと移行。テーマはもちろん、コードの移り変りも安定したものではなく、一歩先の展開が見えない奇妙な感覚を覚える。

そしてブレイクを挟み、「待ってました!」といわんばかりのゴリゴリとしたアシッドシンセが徐々にその姿を現し、一気に過熱度を加速させ、爆発的なピークタイムへと突入する。「お得意」のカッティング・シンセの上に、高音&高速アルペジオが強烈に駆け巡るこのサウンドは非常に強烈だ。もはや前半〜中盤までの「味気ない」雰囲気は皆無である。

そしてイントロで聴かせた静けさの漂うアルペジオで曲は終了。特定のテーマを全面に押し出した「Day Light」の後に、これだけ対極した曲を持ってくるHypersonicのセンスにも注目されたい。

08. Disco Mania

まるで夜が明けたかの様な、はたまた夜のクラブパーティがいつまでも続いている様な雰囲気が全体を包み込む「Disco Mania」。キラキラと輝くミラーボールが良く似合いそうな一曲である。

リッチで壮大なパッド音に乗せたブライトシンセが美しいイントロから曲はスタート。アシッド感を極力抑えた綺麗モノのシンセで色鮮やかに曲は展開してゆく。まさにディスコナンバーとなりそうな、良い意味で古臭いテーマの連続にニヤリとさせられる。

中盤は軽いブレイクを挟み、メインテーマとなるアルペジオが鳴り響く中、コード感を極力抑えたアシッドなパートへと展開する。ラップボーカルまで飛び出すアッパーなサウンドではあるが、実にストレートかつ自然な構成であり、これまでの曲展開とは一味違った面白みがある。

しかし、それだけで終わらないのがHypersonic。曲は前半の雰囲気をそのまま残しながらブレイクし、宙を舞うような、澄み渡るピアノのイントロがリフレイン。胸を熱くさせるその音色からいきなりディストーション・シンセが登場。お得意の「エグい」リフが前半のテーマと激しく絡み合い、混ざりながら絶頂のピークタイムへ突入する。正にサイケとディスコサウンドの融合である。アシッド系統のシンセを全面に押し出していた、各曲のピークタイムとは異なる方法論で、更に更にと曲のポテンシャルがグレードアップしてゆくサウンドだと表現できるだろう。

そして再度登場するピアノイントロが終盤を飾り、曲は幕を閉じる。サイケトランスとしては個性的かつ実験的な曲にあたると思うが、型崩れになってない点は評価すべき所だろう。ただし、綺麗すぎるテーマが全体を占め、更にアシッドシンセの登場も少なめなので、粋なサイケファンには少々物足りない面もあるかもしれない。

09. Start Again

最後を飾るのはアルバム唯一のダウンビートナンバー「Start Again」。

近年、サイケトランスシーンでは、ライヴやパーティの後に流れる、Chillout的要素を含めた「歌モノ」が増加している。(もちろん、ライヴ中に披露する事も多々ある。)この曲もその風潮からか。音楽的には退屈な曲だが、CDのラストといった点を考えると自然な流れではある。

Aメロのラップ、中盤登場するシンセリフが特徴的。覚えやすいサビはパーティでの大合唱が期待できそうだ。Infected Mushroomの「I Wish」を意識したと考えられなくもないが、構成は酷似しているものの、この「Start Again」は、お得意のアラビア音階が絡んでいるため、特有の個性はアピールできているように思う。タイトルがHypersonicの今後の活動を比喩しているかのようだ。

総括

とにかく一曲一曲での展開の豊富さが何よりものHypersonicの「魅力」ではないだろうか。

そこに絡んでくるアラビア音階もまた良い味を出しているし、曲構成は複雑なものの、しっかりとピークタイムでアゲてくれる事にも安心感を覚える。そして何よりその展開の速さ、豊富さにより、「また聴きたい」もしくは「聴き込みたい」といった欲求が出てくる点は、評価できる所だと思う。

また、音質そのものも他のフルオン系統のアーティストに比べると個性的で、チューニング高めの歯切れのよいドラム音が、全体的に締まった感じを演出している。1stの「Freedom」ではそこまで印象的ではなかったが、ここにきてHypersonicの音の好みが全開に出ているように思える。ただ、それが狙いなのかも知れないが、全体的に音像の奥行が不足しているのは少々残念であった。

多数のイスラエリ・トランスアーティストが切磋琢磨している中、Hypersonicのように、しっかりと「芸」のあるアーティストが今後どのような活動を見せてゆくかが非常に楽しみであると同時に、そんな期待にしっかりと応えてくれる「Access Denied」であった。

Hypersonic - Access Denied [1/2]

Trance (Full On), Trance (Psychedelic), Trance 4 Comments

Artist: Hypersonic
Title: Access Denied
Label: Phonokol Records
Released: July 2007

01. Suicide

1st Album「Freedom」のヒットが記憶に新しいイスラエリ・フルオン期待の新星Hypersonicが放つ本作「Access Denied」。

1曲目は、意味深なタイトルが付けられた「Suicide」で幕が開ける。

優しくも憂鬱さが漂うアルペジオから始まり、なんともコミカルな表情をしたアシッドシンセが耳に飛び込んできたかと思えば、2:30付近で突然スイング調拍子へとシフトチェンジし、ブレイクを挟んでギターリフ全開のフルオンモードへ。息もつかせぬ程の展開に、彼らが持つオリジナリティとセンスが垣間見えるようだ。

しかし、Hypersonicが持つオリジナリティはこのポイントだけに限らない。これはアルバム全体を通して言える事だが、上モノを飾るメロディーはアラビア音階の影響が強く表れているし、レゾナンスの効いたリードシンセは、彼らならではの「クセ」を演出しているようにも思う。ただ単に奇麗なだけでもなく、アグレッシヴに攻め立てるだけでもない、良い意味での「気持ち悪さ」や「怪しさ」が「Hypersonicのオリジナリティ」とも言えるだろう。聴いていて実に爽快だ。

曲のレヴューに戻ろう。ギターリフが炸裂したところで、イントロのアルペジオを挟み、一気に曲はエネルギーを解放するかのように、アシッドリフ、アシッドシンセ全開のピークタイムへ。アルバム1曲目ながら、非常に凝った曲構成にノックアウト必至である。

そして、再度イントロのアルペジオが流れ、曲の終焉と共にアルバムの幕が開ける。この不穏なアルペジオと、曲のタイトルが「期待感」を醸し出しているかのようだ。

02. Plug & Play

続く「Plug & Play」。ここでも「Hypersonic節」が全開である。

イントロの特徴的な和声的短音階が不安感を煽るものの、曲は一転してアコースティックギターをかき鳴らすと云う斬新なトラックへ続く。トランスというものを根本にしっかり持ちつつも、ディスコ調のダンサブルなこのパートには正直驚いた。

しかし、そんな感覚もつかの間。軽いブレイクを挟み、ポリ系のシンセをリードとした、コードチェンジの激しいパートへと展開する。相変わらず凄い展開の早さだ。この情報量、技術量の豊富さは並ではない。

ここでもアラビア調の音階が全面に押し出されており、どこか哀愁漂うメロディが頭の中を駆け巡る。時に情熱的ですらあるこのメロディには、胸を熱く躍らせる魅力があり、単に「ダンス」といった概念だけでは得られない高揚感があるように感じた。前半で見せたアコースティックギターでもそうだが、ほとんどが打ち込みによる音なのにも関わらず、この曲には「生」っぽさが影を潜めているようにも思う。

しかし、テーマパートおよびテーマを目まぐるしく展開してゆく事により、一定の雰囲気を残さない表現が、結果として不安定感・無機質感を増強し、曲そのものの輪郭を引締め直している。曲後半はあれだけ移り変わっていたコードチェンジを抑え、安定感を取り戻しつつ、サイケデリックかつアッパーなフルオンパートへと移行する。実に聴き応えのある曲構成だ。

03. Access Denied

3曲目はアルバムタイトルともなっている「Access Denied」。

この曲の面白みは、なんと言っても中盤と後半に顔を見せるゴリゴリとしたエレキベースとディストーションギターの存在だろう。このパートは従来のフルオンにありきだった、「あくまでも盛り上げる為のギタートラック」とは趣向が違い、もろにHR/HMの要素が飛び出している。実験的ではあるが、そのインパクトの大きさが曲単体の面白みを更に引き出している事は明確だ。

前半からキレイ目の上モノのパート数を最小限に抑え、テーマを強調してゆく実にアグレッシヴな展開である。比較的シンプルなベースリフが安定感を聴かせる中、徐々に重なってゆくアシッドシンセが絡みつき、これまでにない不穏感をリスナーに与える表現だ。このままピークタイムに突入してもなんら不思議ではないのだが、ここで見事に曲は豹変し、上記のディストーショントラックが耳に飛び込んでくる。「Access Denied!」というタイトルコールが期待感を煽る中、再び曲は一変し、ブライトシンセが空を泳ぐパートへ。

一体この展開は何を狙っているのだろうか。約8〜32小節を単位としてテーマが変わる度に、パートやリズムを含めた構成全てが入れ替わる、この信じがたい展開バリエーションは、明らかにアルバムの中でも異質であると同時に、存在感をアピールしているようにも感じとれる。

(ここからは個人的解釈だが、曲のタイトルを直訳すると、「アクセスが拒否されました」となる。つまり「閲覧するにはパスが必要」となるわけだ。この意味合いを考えると、上記で挙げたタイトルコールを繰り返す中盤の印象的なディストーショントラックには、警報音のようなシンセが織り交ぜられていることもあり、「何かを得てしてでしか聴くことのできないパートを意図的に隠している」と考えられるのではないだろうか。)

そして後半はポリシンセを際立たせ、一気に加速するようにピークタイムへ。繰り返されるリフが徐々に音数を増してゆく、ダンスフロアを揺るがすような強烈なピークタイムだ。これぞサイケトランスの醍醐味である。

04. I Can Feel It

続く「I Can Feel It」。このあたりからアルバムの展開そのものがアグレッシヴな方向へと向かってゆく。これはライヴ感を強く意識して作られたものだと思うが、サイケトランスでは定番の方法論ながらも、その無理のない自然な繋がりには、Hypersonicの豊富な経験が生かされているように思う。本作を聴く上で重要なファクターの一つだ。

さてこの「I Can Feel It」だが、前半は定番のレゾナンス+ピッチベンドの効いたハードシンセを中心としたテーマで攻め立ててゆくものの、これまでの展開のめまぐるしさは影を潜め、中盤以降に登場する印象的なボーカルを軸とした様々なパートで、「バリエーションを変えながら同じテーマを演奏する手法」を聴かせ、より一層の安定感と疾走感を醸し出している。音を足したり、引いたりと表情豊かな印象だ。

「I Can Feel It!」と繰り返されるボーカルパートが躍動感溢れるリズムの上で踊る中、お得意のアラビア音階シンセが怪しい雰囲気を色付けるように飛び回る。このドライヴ感溢れるテーマを後半直前まで引っ張り、後半はブレイクを挟み徐々にコードアップさせ、またまたフロア直撃型の強烈なピークタイムへと突入。マイナー・コードの構成音をフルに鳴らした細かい高音アルペジオが、リスナーの高揚感を極限まで引き上げる。その後、エレキギターのフィードバックを再現したようなメロウなシンセでピークタイムの余韻を残しつつ曲は終了。「盛り上がり」といった点において、この曲は圧巻だと言っても良いだろう。

ただその一方で、アルバム収録曲の中では、比較的展開が少ない曲でもあり、音楽としての意外性やエンターテイメント性が損なわれていると考える事もできる。良い意味で捉えればストレートかつタイトな表現だが、もう少しアクセント的要素を追加してもマイナスポイントにはならなかったであろうと思われる。

05. Dramatic Combo

「I Can Feel It」の流れをそのまま受け継ぐようにスタートする「Dramatic Combo」。

とにかく中盤の懐古感漂うマイナー調シンセ・メロディーのユニゾンが耳に残る。このユニゾンのせいもあってか、曲の全体像としては、他のアルバム収録曲(M-9「Start Again」を除く)とは一風変わったサウンドを演出しているように感じた。

前半から9th, 11thの構成音を強調したストレートなマイナー・コードに乗せたテーマが全面に押し出され、(アッパーではあるけれども)どこか緩やかな音の流れに身を委ねているような印象を受ける。奥行があるとも言えるだろうか。

そのヴィジョンを受け継ぐように中盤のメインテーマが顔を出す。展開の多いHypersonicだけに、最初にこのメロディーラインを聴いた時はすぐに別のテーマにバトンを渡すかと思ったのだが、これに限ってはスタート(3:15付近)からブレイク(4:50付近)まで56小節と、同じテーマを長めに引っ張っている。とは言っても、決して「くどい」といった感覚には陥らないだろう。最初はシンプルかつ虚ろな印象を与えるものの、次第に音数を増してゆき、 40小節目あたりからは同じメロディーラインにも関わらず、フルオン全開のエネルギッシュなパートへと「ドラマティックに」変貌する。これは見事。展開の多さだけがウリではない事を、リスナーへ強くアピールしているかのようだ。

続く後半は、この雰囲気からなだれ込むようにピークタイムへ。より一層のエネルギーを解放するかのごとく炸裂するフルオンサウンドには思わず踊らされてしまう。音数が多い反面、音色・構成音共に垢抜けた感のあるアルペジオが反復するため、聴いていて実に心地よい。前半のマイナー調から、ラストのピークタイムの開放感まで、隙を与えずにドライヴする展開はさすがと言えるだろう。