Various Artists - Deep Fried (Compiled by Dj Shiva Moon)[2/2]

Trance (Dark Full On), Trance 4 Comments

06.Neuromotor – Virtual Memory

攻撃的なフルオン・サウンドを基調としながらも、その音楽性は高揚感豊かなトラックから、ダーク色の濃いトラックまで幅広く、実に多くのコンピに名を連ねる存在であるNeuromotor。「Neuro Damege」や「Bloody Reality」などのオリジナル・アルバムも有名である。

イントロから何のヒネリも無くスタートするリズム・トラック。今回のコンピ収録曲の中では異質とも言える「動きのあるベース」が王道的な印象をリスナーへと与えつつ、自己主張の薄い上モノが少しずつ曲の世界感を彩ってゆく。

2:11から、これまでFxとして使われていたアシッド感のあるシンセがリフへとチェンジし、これまで若干ラフであった雰囲気から一転、緊張感高まるパートへと突入する。展開としての意外性も兼ね備えており、インパクトはなかなかのもの。

2:52からは上記のリフに替わって不穏なメロディーの上モノが登場。無機質感たっぷりに奏でられるこのシンセ、単調ではあるが、ダーク寄りの不快なサウンドを促すのには適切な表現だと言えよう。

中盤付近では特に目立った動きは見られず、リズム隊の単調さも含めて物足りないが、4:00からベースがスタッカート気味になり縦ノリ感を突然強調する展開を聴かせるなど、序盤のテーマ移行の内容も踏まえて、意外性といった点では評価できる。これは経歴から滲み出るNeuromotorのセンスだと言えるだろう。

後半は5:17からリフレインするメイン・リフを軸に、定番とも言えるシンセを所々織り交ぜながら展開する。6:23からはベースも大胆に動き出すピークタイムへと突入するが、上モノに大きな変化が見られない為「爆発的な盛り上がり」とまでは至らず、中途半端な印象を受ける。(焦点を「王道的フルオン・スタイル」に合わせて考えた場合は、この限りではない)

実にアッパーかつ、安定感のあるサウンドではあるものの、本作「Deep Fried」の収録曲としてはアピールポイントが少なく感じられる。定評のあるNeuromotorだけに、少々残念な内容であった。

07.Delysid - Rajasthan Army Rmx

知名度の上昇が驚くほど早いのは、その高いスキルはもちろん、曲のコンセプトが決して照準を逸脱する事なく、Sao Paulo(ブラジル)出身Delysidの個性に染められている事に尽きるだろう。攻撃的、民族的、退廃的、と様々な言葉が浮かぶが、どれを取っても彼らの個性を表現するには要素が足りない。今回収録された曲もまた同じく、Delysidを知るには十分な魅力で溢れている事を先に触れておこう。

イントロはアラビア楽器であるシタールを用いたものであるが、半音階で演奏されるその音色は「非アラビア的」であり、深く沈みこむ単音キックや、英語のナレーションも手伝い、実に不気味な雰囲気を醸し出している。

リズム導入後、バックはIm - Vを繰り返す単純な短調だが、その上で中音域の効いた特徴的なパッド音がテーマを奏で、リスナーをDelysidの個性的な世界へとグっと引き込んでゆく。重過ぎず、タメの強いキック音、派手な動きではないが着実にコード構成音を押さえていくタイトで冷たい印象のベース、ぐにゃりと曲がった民族的なシンセ。彼らの音に対する「徹底ぶり」には感心させられる。

曲構成も自然な流れを最後まで貫いている。2:50あたりにかけて聞かれる、メインテーマを残しつつ、音を切り刻むBeat RepeatやGatingを多用した表情の移り変わり、3:30のブレイクからリフレインする、中高音のリード音を軸とした音数の多いアルペジオ、後半では同テーマを軸とし、Flangerを深めにかけたBlow系のリード音に展開するなど、実に無駄がなく、巧みに構成されている。また、細かなブレイクもDJタッチなものが多く、ここぞという所でキメてくれる点も嬉しい。

6:13からのピークタイムでは、従来のゴアトランス・フリーカーでも唸ってしまう程の盛り上がりを演出する。ダーク系統ならではのこの破壊性は、時にメロディアスでもあると言えるだろう。終盤付近では、ピッチをあえて外す手法を用い、「壊れてゆく様」を演出しているようでもある。ラストはその余韻を残しつつ、イントロを介入して曲は終了。

近年ではファーストアルバム「Noize Infection」をリリースするなど、精力的な活動を続けているDelysid。これだけアクが強い曲をドロップし続けているアーティストだけに、万人受けするとは言い難いが、その表現力の高さには是非触れて欲しいと思う所である。

08.I-DNA - Psycho Bitch

続いて、全くの無名であると思われるI-DNA。今現在、Myspaceで公開している僅かな情報でしか彼を知る事が出来ないが、今回収録された曲”Psycho Bitch”から伝わってくるオリジナリティは、アンダーグラウンドながら強烈な存在感を放っている。一概にこの曲だけを聴いて、彼のスタンスを固定させてしまうには早いが、今後、気になる存在としてトランスシーンに君臨してくれる事を期待しつつ、情報を待とう。

Myspaceでの情報はこちら↓
http://www.myspace.com/index.cfm?fuseaction=user.viewprofile&friendid=188821504

これはフルオンスタイルと言って良いのだろうか。基本的に聴こえ方は明るく、開放的ではあるが、曲全体に渡ってN.C.(No Code)が貫かれており、コードがマイナーもしくはメジャーに定まることがなく、終始不安定感を演出し続ける非常に風変わりな曲であるため、一度聴いただけでは難解な部分も少なくない。上モノもクセのある独自の表現で、音単体は明るめのシンセを起用しているものの、気持ち悪さが先行するメロディラインが幾つも存在するため、摩訶不思議なロシアン・サイケ(スオミ)的だといった印象さえ受けてしまう。そういった意味では、やはり「ダーク系統」に分類される曲ではないかと思われる。

比較的短めの不穏なイントロからスタートするリズム・パート。ゲートタイムの長めのベースが比較的高い音域において演奏され、BPMの割に疾走感を演出する。ここから徐々に入り込むシンセが、ベースラインが印象付けたコード感を徐々に破壊してゆくさまは、正にサイケデリックと言った所だろうか。

0:40〜のパーカッション的なシンセ、1:47〜のリフ、2:30から徐々に聴こえだすシンセなどなど、特定のメインテーマを据えず、2〜3個の性質が異なるリフが「掛け合い」ながら曲は展開してゆく。この手法自体は珍しいものではないのだが、上記の通り全体がN.C.で構成されているため、移り変わってゆく音を拾うたびに別の世界が創造されるという、非常に斬新なサウンド・スタイルを提示している。

中盤〜後半にかけても大きな変化はなく、上モノを次々と変化させ曲は展開してゆく。6:30に、一瞬Im7が聞かれるが、それもつかの間、ベースは元の構成へと直ちに戻ってしまう。その後も際立ったピークタイムなどは存在せず、一定の熱量を維持したまま曲は終了。

リスナーを飽きさせない構成は勿論、「また聴きたい」と思ってしまうアンダーグランド的要素がたっぷりと詰め込まれている”Psycho Bitch”。ドロップしたI-DNAの今後のアクションに注目したい所だ。

09.Audialize - Contact

トリを飾るのは、破壊性と繊細さを兼ね備えた、独自の世界観を提示し続けるポルトガル・クリエイターAudialize。今までにフルアルバムを2 枚リリースしたほか、ダーク・フルオン系統を中心とした数々のコンピに曲を提供しているため、近年では有名な存在となっている。

シリアスな雰囲気のイントロから曲はスタート。比較的アタック感の強いキックに、淡々と刻まれるベース。王道的ではあるが、ダークな感覚とは少しニュアンスが違い、イントロの余韻も残されている為か、どこか物哀しげな印象を受ける。

続いてリフレインする最初のテーマは最後まで活躍。中国の民族楽器の簫(しょう)だと思われる、民族管楽器の音色が独特の浮遊感・懐古感を演出すると、エッジの効いたアシッドなシンセ、およびアタックの遅い単音のSine Waveが高音域に加わり、全く異なった2つのテーマが絡み合うといった展開へ。

中盤、上モノに大きな変化はないものの、3:33のブレイクからはコードに動きが付加される。Im→Vm→VIIm→Imという変則的なコード進行ではあるが、不思議と不自然な印象は残らず、曲全体に漂う雄大な雰囲気をより一層強めているようでもある。

4:27辺りから上モノが自己主張を強め、徐々にヒートアップし、流れるような展開でフルオン的アプローチのピークタイムへと突入。アシッド感強めのテーマに、縦ノリを強調したリズム・パート、5:07からリフレインする高速アルペジオなど、一段と攻撃的に曲は展開してゆく。更に、ここでも曲の顔となっている民族管楽器が絡むため、序盤から創造されてきた曲の雰囲気はそのままに、その音色は溢れ出す感情とリンクするかの如く、高ぶる高揚感・浮遊感を確実なものへと導いてゆく。巧みなシンセ使いによる表現と、抽象的な印象を与える表現が同居した、斬新かつ見事なピークタイムであると言えるだろう。

アルバムの序盤で聴かれたような、混沌としたダークスタイルとは別物ではあるが、Audializeのセンスが滲み出たこの曲のクオリティは実に高く、アルバムを締め括るのには十分な魅力に溢れていると言えるだろう。

まとめ

新レーベル第1弾のリリースとなる本作だが、そのサウンド・クオリティには驚かされる。M-1.Concept、M-3.Tryambaka、M- 7.のDelysid、M-9.Audizlizeなど、様々なサウンド・アプローチが同居しているため、このコンピを「ダーク・フルオン」の一言でジャンルを位置付けてしまうには実に勿体なく思う。これは一貫性に欠けるとも取れるが、それぞれの個性が堪能できるトラックが大半を占めているため、バラバラだといった印象を受ける事はない。これも、本作の特徴の一つである。

音質としては、コンピなので一概には言えないが、ボリューム・バランスも良く、音圧レヴェルも整っており、全体として気になるような所は無い。ストレスを感じる事なく、リスニングなりDJプレイを楽しめる事だろう。

収録されているアーティストがベテランなのか新鋭なのか、はたまたアンダーグラウンドな存在なのかは問う必要性がないと言ってよいほど、ハイ・クオリティなアンリリース・トラックで構成された本作”Deep Fried”。2008年2月現在、Rudraksh Recordsに動きは無いが、まだまだリリース量が多いとは言えないダーク・フルオン界に、今後どういった風を起こすのか期待しつつ、次回作を待ちたい所だ。

Various Artists - Deep Fried (Compiled by Dj Shiva Moon)[1/2]

Trance (Dark Full On), Trance 4 Comments

Artist : Various Artists
Title : Deep Fried (Compiled by Dj Shiva Moon)
Label : Rudraksh Records
Released: 2007

2007年、世界はインドよりDJ Shiva Moonがオーナーとなるニューレーベル「Rudraksh Records」が誕生。本作「Deep Fried」は記念すべき第1弾のリリースとなる。紫を基調とし、カラフルでサイバー感溢れるデザインのジャケットに、まず目を奪われる。本作は多数のアーティストをコンパイルしたV.A(Various Artists)で、ダークフルオン・クリエイター達の強烈なトラックが目白押しだ。ちなみに、コンピではあるがNon-Stop MixCDではないので、DJ用としても使える1枚となっている。

オフィシャルサイト:http://www.rudrakshrecords.com/

01. Concept - Electro Undulation

アルバムのスタートを担うのは、最近(2007年現在)2ndアルバムをリリースしたばかりのConcept。まずは挨拶程度・・・と思いきや、頭から強烈なダークフルオン・サウンドが展開してゆく。

曲のスタートと同時に、何やら不気味な環境音的パッドが飛び交う中、入り込む英語のナレーションがその雰囲気を増幅させてゆく。このナレーションの内容は、世界的に有名なヴァイオレンス・アクションゲーム「Biohazrd」に登場する、”Umbrella Corporation”という架空の企業の説明であり、曲との関連性は不明だが、興味深い演出である。(”Umbrella Corporation”の解説についてはこちら http://en.wikipedia.org/wiki/Umbrella_Corporation

ソリッドかつミニマルで、かつ深く沈み込むリズム・トラックとベースラインが、ダークな描写ながらタイトな印象をリスナーに与える。淡々と繰り返されるだけではなく、リズム・バリエーションをフィルインに代えたり、コード感を押さえつつもオクターブ幅で動いたりと、実に芸が細かい。ブレイクで聴かせる HPF(High Pass Filter)等のエフェクトの使い方も効果的で良い。

肝を握る上モノ使いも実に多彩で、序盤こそ金属的パッド+Fxでの色付けがメインだが、中盤以降ではエグいアシッド・シンセが徐々にその姿を現し、トリップ感を増幅させてゆく。ザクザクと刻まれる、ダーク系統ではおなじみのシンセリフと、パンポットを自在に操りながら空間を飛び回るアルペジオ・シンセが絡み合う展開は、王道的であり、やはり強烈なインパクトである。不安定なメロディ・ラインも特徴的だ。

アルバム1曲目ながら非常にクールなサウンド。まさに、闇への招待状といった所だろうか。

02. Phyx - Fatality

南アフリカが誇る有名レーベル(Time Code, Afrogalactic等)のコンピに、幾度となくトラックを収録してきたPhyx。ダーク・フルオン界ではトップ・クリエイターの一員と言っても過言ではなく、Randam LとShift、そしてこのPhyxとが手を組んだTwisted Systemや、TicketとのユニットBrethrenなど、別名義も掛け持つほどの存在である。

さて、そのサウンドはどうだろうか。かなり低めでドロドロとしながらも、中音のアタック感の強いシンセ・ベースが曲のキャラクターを創造してゆき、淡々と刻まれる、無機質感満点のリズム・パートがその世界を確実なものとしてゆく。冷たく、一寸先の見えない闇とは、こういったヴィジョンだろうか。

序盤からバッキングで聞かれる、付点八分ディレイのかかった減衰音シンセが、様々にパン変え、まるで虫の飛び交うような異様な雰囲気を醸し出す。所々でサンプリングされている奇妙なボイスや、メロディーとは呼べぬシンセFxなども、その雰囲気と見事にリンクしている。

3:00付近のブレイクからリフレインする、半音進行で下降するシンセ・アルペジオが、生温く、ゆったりとした空間を演出すると、この曲のメインテーマである、V度のパワーコードのリード・シンセが、4:00付近から徐々に高音から聴こえ出し、4:50付近の華麗なブレイクからエフェクトをフル開放させる。これは見事。トリップ感溢れる演出である。(同様の演出は5:45, 7:20のブレイクでも聴かれる。)

その後はこのメインテーマと、様々なシンセとが融合し合い、軽めのブレイクを挟みつつ曲は展開してゆく。8:00付近のブレイクから、序盤で聴かせたシンセが大集合し、ピークを演出するが、「パターンを使い回してる感」が否めず、曲の長さも相成って、少々ダレ気味な印象を受ける。しかし、そのサウンド・クオリティは高く、同時に個性的であり、良い意味では「どっぷり浸かれるサウンド」とも言えるだろう。

03. Tryambaka - My Black Engel

続いてポルトガル・トランスクリエイターTryambakaによる「My Black Engel」。

多数のコンピ・アルバムに楽曲を提供してきたアーティストだが、いずれもアクが強く個性的で、同時に構成が複雑であるため、一度聴いたらなかなか忘れられないトラックが多い。また、やっている事は紛れもないダークフルオン・トランスだが、曲が醸し出す雰囲気がどことなくゴシック・メタル調である事も特徴的である。

ちなみに、2007年の12月に1stアルバムをリリース予定なので、こちらも注目されたい。(詳細はオフィシャルページ:http://www.tryambaka.com/ にて。)

アタックに高音の利いたバスに、淡々と地を這うベースが絡み、曲はスタート。序盤は特に目立った動きはないものの、バックで流れているジュルジュルとしたアシッド系シンセが徐々に形を整えて姿を現し、奇妙な一体感を演出する。このシンセは全編を通して活躍。

1:35付近のブレイクからは、上モノと共にスライドするような突飛なコード進行と、それに乗る自然的短音階でゴシック色を強めてゆく。サイケデリックでありながらも、神秘的とはまた違った、虚ろげで退廃的なこの雰囲気は簡単に描けるものではなく、良い意味で大変気持ちが悪い。

4:20からは雰囲気が一転。コードを固定させ、Fxをメインの上モノに安定感・ソリッド感を前面にアピール。ゴリゴリのダーク・サイケでも十分に通用しそうなこのパートは強烈である。更に、5:15でベースをまるで低音域ギリギリまで下げるようなコードチェンジが待っており、よりドロっとした雰囲気の中で、曲のトリップ感は増幅してゆく。

このパートのブレイク後、女性ボイスをピッチシフトする手法が不安感を煽ると、加熱する曲はピークタイムへと突入。前半とは音色・アレンジの違った螺旋状のメロディーが、より一層の絶望感を描いているかのようだ。最後まで飽きさせない曲構成もさることながら、ありきたりなダーク・サウンドとは一線を画した表現は見事。今後が楽しみである。

04. Shift vs Abomination – Aftermath

南アフリカの大ベテランにして代表的クリエイターChris HoyことShift。この曲は現代ダーク・フルオンサウンドの象徴と言っても過言ではないだろう彼と、そのShift自身が運営するレーベルNexus Media所属の、同じく南アフリカ・クリエイターAbominationとの共作となっている。

意図的にかけたと思われる、不自然なオーバードライブを伴うパッド音が不快感いっぱいにイントロを飾ると、地を這うキックとベース、同時に不気味な英語のナレーションが聴こえて来る。何とこのナレーションは、映画「Underworld」で使用された台詞であり、途中で” To witness this monster’s aftermath”という台詞がある事と、曲のタイトルが連動している事を含めると、この曲のコンセプトは映画「Underworld」に焦点が置かれているのでは無いかと思われる。意味深かつ、興味深い謎掛けである。

“But William must be controlled”というナレーションから、グッと押し寄せる冷酷なベースラインと、タイトなドラムパート。上を飾る図太いリード音による定番のリフが、微妙なニュアンスの違いをちらつかせながら舞っている所に、Stab系シンセのきらびやかなテーマがリフレインし、テーマをバトンタッチさせる。これはなかなか見事な演出である。

3:10から始まる移行部では、馬のいななく声や、日本太鼓の音などがFxとしてふんだんにちりばめられており、上モノに頼りがちなキラーパート一辺倒で構成されている曲とは一味違った面白みがある。また同時に、こういった「サイレント」なパートを曲の中間に挟む事で、曲全体に締まりを与えているほか、ゾクゾクとする恐怖感と期待感、その両方を煽る働きを担っているとも言えるだろう。

5:14のブレイク後は、Stab系シンセのテーマがリフレインするが、今回はベースの動きを伴う事で、より一層の一体感をリスナーへと与えてくる。ブレイクも細かめの動きが多く、バスを1小節のみ裏打ちにするなど、純粋にカッコよく決めてくれる点も評価できるものであり、単調になりがちなリフの連続に対する良いアクセントとなっている。

その後は徐々にアシッドシンセやアルペジオを足してゆき、曲のテンションは最高潮へ。この感覚は、アプローチやメロディー・タッチこそ違うものの、90年代に盛んであったゴア・トランスの感覚に近いものがある。Shiftのベテランっぷりが垣間見えるようだ。

05. Abomination - Pusherman

続くトラックは、先述でも触れたAbomination。近年ではデヴュー・アルバム「Enemy Within」をリリースするなど、南アフリカ・トランスクリエイターの中でも精力的な活動を行っている。また本アルバムを含め、様々なレーベルのコンピに参加している事もあり、そのサウンド・クオリティは多方面から評価されているようだ。

トリッキーかつ変態的な拍子のポリ系シンセが、単音弾みでイントロを飾っている所に、ザクザクとしたディストーション・ギターの様な深い歪みの掛かったシンセが、何の前触れも無くカットインし、曲の幕が開ける。弱起によるシンセのアプローチが、トランスながらロック・テイストを醸し出しており、リズム隊の無機質感も含め、非常にクールな感覚だ。

1:35付近から徐々に顔を出すメインテーマ。アシッディーな音色と、III - IV - III の繰り返しが非常に印象的である。中盤辺りまではこのメインテーマを軸に構成されているものの、今まで不変であったベースラインが3:30付近からグルーヴィにうねり始めるという展開のほか、4:00付近でのHPFによるバス・カットを大胆に使用したアプローチなど、なかなか凝った展開を聴かせる。

4:25〜後半にかけては、テーマこそ大きな変化はないが、切れ味のいいブレイクを挟む度に重なってゆくシンセとFxが、自然と曲の高揚感を高めると、 6:13から更に激しさを増したベースラインがそれに拍車を掛け、序盤〜中盤で使用されたメイン・シンセが大集合し、まさに「混沌」としたピークタイムが創造される。曲全編に渡って疾走感が維持されている事も手伝って、強烈なトリップ感覚である。ダーク系統ならでは、といった所か。

最後は、ピッチシフトを用いてドラム音(ハイハット)をだんだんと衰退させるという風変わりな手法でフィニッシュ。

今回のコンピ収録曲の中でも、トップクラスのアグレッシヴ・ナンバーであり、明るく、開放的な雰囲気とはまた違ったダーク・フルオンサウンドの良さが濃縮されている曲だと言えよう。きめ細かな手法の数々も評価できる。

Alien Project - Activation Portal [2/2]

Trance (Full On), Trance 2 Comments

06. Activation Portal

アルバムタイトルともなっている「Activation Portal」。

音色にクセの少ないGated Synthを多用した王道的なスタートを切るも、アルバム前半の曲と比較すると、穏やかなサウンドといった印象を受ける。曲の序盤で時折入り込むノイズ寄りのシンセや、深いディレイの掛けられたボイスパッドなどは、ほどよいアクセントといった所であろうか。アルバム前半で聴かせたシンセ使いとは違い、強烈なキャラクターを生み出すものではない。

中盤からは徐々にアッパーな方向へとシフトしてゆく。テーマは終始一定なものを聴かせるが、ブレイクを挟む毎に、ゴリゴリとしたシンセが次第に前面へと押し出され、ベースラインとユニゾンするかの如くリンクし、ブライトシンセが映えていた序盤〜中盤とは全く違ったサウンドを展開してゆく。これと同時にコードも動くため、自然とリスナーの期待感、高揚感も高まるようだ。

終盤は引き算的にパートを減らし、クールダウンして終了。実に安定したサウンドではあるが、曲構成としては平凡であり、タイトル曲である事も含めて、物足りなさは否めない感がある。

07. Get Up

ポジティブ感に溢れるアグレッシヴナンバー「Get Up」。アルバムの後半であるが、曲のテンションは衰える事なく続いてゆく。

スタートから空間いっぱいに広がってゆくシンセが印象的だ。アシッド色を抑えた、レゾナンスは強いが柔らかみのある音色である。ベースやキックは他の曲と比較しても、そう代わり映えしないが、アクティブに操られる上モノをしっかりと支えつつ、芯のあるサウンドをドライヴしており、ここでも安定感は抜群だと言えるだろう。

「So Get Up!」のタイトルコールを曲全般に渡って効果的に使用し、「アゲ」のポイントを巧みにリードしている点もポイントだ。超ディープなディレイ+リバーブが加わっているため、存在感も十分にアピールできるものがある。3:45付近のブレイクから多用され、ピークタイムまでの期待感を煽る手法で、ライヴ感を演出している点も記しておきたい。

また、表情豊かに変化する短音アルペジオはもちろん、付点8分音符の長さを基準としたシンセのアーティキュレーションを強調するなど、なかなか凝った「上モノ使い」を披露してくれる曲でもある。

08. Groovy (Remix)

T.I.P(The Infinity Project)Worldのオーナーであると同時に、40年以上にも渡って音楽活動を続けてきたサイケシーンのドンことRaja Ram。この「Groovy」は彼とAlien Projectととのコラボであり、前作「Don’t Worry Be Groovy!」にも収録されていた曲であるが、今回はRemixという形で再収録。ビッグネームとのタッグだけに、パワフルなフルオンサウンドが遺憾なく繰り出されてゆく。

カットオフ周波数を徐々に変化させる手法で、じわじわとキックの音色が太くなってゆくイントロからスタート。そこに飛び込んでくる動きの激しいベースラインは、正に「グルーヴィ」。bIII音やbVII音を経由しコード感を印象づけている。

そして「やはりRaja Ram」スタイルといった所だろうか。付点八分のディレイおよびゲーティングとともに展開されるエレキギターのパワーコードが強烈な存在感を放っている。ブレイクと共に「Groovy?」のボイスサンプリングが顔を出し、オープンハイハットとAlien Projectお得意のアルペジオ、そしてRaja Ramのギターが一気にスパークする展開。思いっきり爽快なパートの連続に、リスナーはノックアウト必至である。

頻繁なブレイクを介して展開するバリエーション、組み合わせの多さも特徴的だ。3:45付近でリフレインする、ブライト系シンセによるアルペジオ、同じく 6:10付近でリフレインする、アシッド系シンセによるアルペジオは、それぞれ表情が違っていて実に面白い。このあたりがAlien Projectの「職人芸」だと言って良いだろう。

決してRaja Ramに頼りすぎる事なく、互いのセンスを見事なまでに融合させ、オリジナリティ溢れるサウンドに仕上がっている名曲だ。アルバムの流れも兼ねてポジティブに楽しみたい。

09. Yellow Blaze

いきいきとドライヴされる、パワフルかつソリッドなバッキングパートの上に、綺麗なテーマが曲全般を駆け巡るモーニングナンバー「Yellow Blaze」。クリーンと歪みの対比が実に美しい曲だ。

イントロからポリ系のシンセが溢れ出し、モーニングの肝である浮遊感を演出すると、息をつく暇も無く、レゾナンス周波数の変化を伴う歪み系シンセが登場。疾走感に溢れ、曲にほどよい緊張感を与える、重要かつ「カッコいい」パートである。

1:20付近のブレイクから序盤のテーマフレーズ(bA G bE 〜)がリフレイン。響き渡るそのフレーズは、ここからコードに動きが与えられる事も手伝って、安心感のある、心地よい空間を演出している。

中盤では「bA B C bE」のスケール・トーンで構成されたテーマが繰り返され、より一層の高揚感を与える中、曲はブレイク。徐々に加速し、雲を突き抜けてゆくかのごとく、一気にピークへと突入する。ロックテイスト溢れるバッキングの上に、様々なシンセが飛び交うその様子は、フロアやミッドナイトの野外で、様々な光が交差しているかのようだ。

後半にかけ、ポリ系・歪み系シンセとが絡み合い、曲はクールダウンへ。アルバム収録曲の中では、構成・展開共に満足のいく内容。耳に馴染みやすいテーマの存在も良い味を出している。

10. Aztechno Dream (Shanti rmx)

ラストを飾る「Aztechno Dream (Shanti rmx)」。原曲はAlien Projectの3rdアルバムに収録されていたものだが、「A Machine’s Dream」などのアルバムで有名なShantiがRemixを手掛け、再収録となっている。クレジットには記されていないが、ボーナストラック的要素が強いものだと考えられる。(楽曲自体は良質であり、「おまけ」として扱うものではない。)

イントロから不穏な空気が立ち込める中に、ノスタルジックなテンション・コードが登場。これはbIIの半音進行を取り入れたもので、ゴアトランス全盛期のような、不安定感を醸し出すサウンドである。中盤から後半にかけてのピーク直前でも再度リフレインする。

明らかにこれまでの音色とは違う、ボトムの太いリズムトラックがスタートすると同時に、美しくも妖しいm7th系テンション・コードによるアルペジオが繰り出され、空間の広がりを演出する。曲の雰囲気が一定せず、目まぐるしい展開だ。

中盤以降ではよりダークかつヘヴィーとなったリズム隊に乗せて、前半のアルペジオを含めた様々なテーマが展開されてゆく。アシッドシンセの入れ替わりは激しいが、決して「やりすぎ感」はなく、あくまでも色付け程度のものである。

そして後半、メインテーマは徐々にエグいシンセFXに取って代わり、サイケ感を倍増させてゆく。ただでさえ骨太のサウンドに、エッジの効いたこの上モノがじわじわと乗ってくるため、かなり緊張感が高いサウンドだと言えよう。ラストはその勢いを残したまま、シンセの渦に飲まれるかの如く曲は終了。

これまで一貫してポジティブな表現であったアルバム収録曲とは、一線を画したサウンドであるが、オールドスタイルと現代のフルオンの見事な融合は、聴き応え十分であると言えるだろう。

まとめ

全体を通して一貫したポジティブなサウンドが魅力である。また、リミックス陣(04.Tweaky 08.Groovy 10.Aztechno Dream)が良いポジションで収録されているため、アルバムの流れとして「飽きさせない」作りとなっているのは流石といった所か。前半の鍵を握る「N.R.G」や、歌モノを取り入れた「Deeper」の存在も同時に大きい。

音質面では、極端に良いとは言えないが、少し霧がかったような独自のクセがある音で、曲に対しても言える「スペイシー感」を演出させている(10.Azetchno Dreamは例外)。良く言えば、中高音の際立った煌びやかなサウンドだが、欲を言えば、リズム隊にもう少しパンチが欲しかったとも思う。

良くも悪くも進化を続ける「現代」のフルオン・サイケシーンを象徴する今作「Activation Portal」。初期とはサウンドカラーが異なっているため、戸惑う方もいるかも知れないが、逆に、これだけ進化を続けるAlien Projectのようなクリエイターは、次回作が楽しみだとも考えられるだろう。

Alien Project - Activation Portal [1/2]

Trance (Full On), Trance 3 Comments

Artist: Alien Project
Title: Activation Portal
Label: H2O Records
Released: 2007

近年(2007年現在)では自身が主催するレーベル「H2O」を立ち上げるなど、イスラエリ・トランスアーティストの大御所であると同時に、様々な活動に精力を出しているAlien Project。本作「Activation Portal」はAlien Project名義での通算5作目となる。

ゴア・サイケトランスの名盤として名高い1st「Midnight Sun」の様なサウンドは影を潜めてしまったが(この方向性のシフトは賛否両論あると思われる)、安定感のあるフルオンサウンドを軸に、しっかりと自身が持つポテンシャルやオリジナリティーを進化させ、新境地を切り開いている。

01. Super Buster

アルバムのスタートを担うのは、アルバム全体のクオリティを予言しているようなキラートラック「Super Buster」。

アルバム全体を通して、オーソドックスなスタイルではあるが、レゾナンスの効いたバスドラムと、刻みの細かい上モノが疾走感を演出し、パッドシンセや軽めのアシッドシンセ、更には宙を駆け巡るようなアルペジオが絡み合い、極上のサイバー感を醸し出している。

決して生楽器では表現する事の出来ない、このスペイシーなサウンドによって、異次元へと引き込まれてゆくような感覚を覚えるであろう。実に爽快である。

曲に複雑な展開は存在せず、あくまでも曲の全体で踊らせるといった印象。前半で聴かせるテーマを中盤あたりまで引っ張り、軽めのブレイクを挟む度に、曲の表情だけを変化させてゆくスタイルだ。

中盤〜後半では、Am, C, D, F, Emの定番コード進行が特徴的で、曲そのものの開放感を引き立てている。終盤で再度、前半のテーマが登場し、曲は終了。展開の意外性の乏しさには不満が残るものの、サウンドのポテンシャル及び透明度の高さの方が際立つ為、さほど気にはならないであろう。

02. Missing Linker

「Super Buster」の雰囲気をそのまま受け継ぐ様にスタートする「Missing Linker」。

まだまだアルバム序盤であるが、容赦なくハイ・テンションなナンバーを連発させてくる。このテンションを、アルバムを通して持続させている点はさすがといった所か。

スカッとしたパーカッションから突如として押し寄せるシンセの渦。イントロから最後まで活躍する、深いディストーションのかかった、もはやギターともシンセとも区別のつかないパワーコード・リフが、純粋な「カッコよさ」を演出している。

細かく刻まれるシンセベースと、野太いキックが地を駆け巡る中、曲は徐々にアッパーな展開へと導かれてゆく。中盤〜ピークタイムに登場する、アシッド感強めの高速アルペジオや、極限まで歪ませたボイスサンプリングなど、実に様々な上モノシンセが登場するが、これは「聴かせる」といった感じの類ではなく、「自由に遊んでいる」といった印象を受ける。躍動感溢れる演出の数々に、自然と高揚感も増してくるようだ。

また、かなり異質ではあるが、1曲を通して全くコードを変えないという、実にストレートな構成を持った曲であり、キャッチーな印象をリスナーに与えていると言えるだろう。ただしその反面、音楽的な物足りなさが否めない事も事実である。

03. N.R.G

続く「N.R.G」は、アルバムの中でも爆発的なパワーを持った曲だと言えるだろう。

それこそ王道的なフルオン/サイケデリックスタイルではあるが、曲全般に渡って登場する、レゾナンスの効いた金属的なシンセがリスナーに無機質感、及びクール感を与えつつ、1:30付近、3:30付近のブレイクから一気にリフレインするアルペジオが、見事なまでの高揚感を演出している。

特にアルペジオに関しては、「Bb A G」や「Bb G」などのフレーズをひたすら繰り返すという、一見単純なものであるにも関らず、攻撃的な4つ打ちビートの上を華麗に泳ぎ、曲に対してより一層の疾走感を与えている絶品である。また、リフレインする直前のブレイクのタイミングも絶妙だ。ピークの主役を担うには十分なインパクトを兼ね備えていると言えるだろう。

曲単体のテーマや雰囲気こそ大きな変化は見せないが、次々に重なってゆく、序盤〜中盤のシンセの豊富さだったり、ピーク後、シンセのバリエーションを一新させて、新たな展開に切り替えるなど、数々の聴き所が存在する曲でもある。ストレートな表現の中にもやはり、Alien Projectのセンスが滲み出ているようだ。

04. Tewaky(Remix)

タイトルを見て、もしくはイントロを聴いてニヤリとしてしまった方も多いのではないだろうか。この曲は、言わずと知れたPsytrance界のビッグネームAstrixの2ndアルバム、「Artcore」収録の「Tewaky」をRemixしたものである。

Remixと言っても、曲のイメージを大幅に修正したようなものではなく、あくまでも原曲に対して忠実であり、Alien Project自身が、可能な範囲での色付けを行う事で、一味違った「Tewaky」を生み出している、といった感じである。一概に甲乙を付けてしまえるようなものではないので、聴き比べてみる事をお勧めしたい。

曲は、広がりのある低音パッドに乗せた、期待感溢れるイントロからスタート。アルバムを通して一貫性のあるシンセベースとキックの絡みが安定感をリスナーに与えている。

特徴的なのは、ベース音・バッキングでIII、もしくはbIII音を鳴らさずに、上モノでコード感を表現する「分離法」を使用している事である。上モノのバリエーション1つで曲の表情がガラリと変わってしまう手法なので、曲の緊張感の高さが聴いて取れる事だろう。

また、「NRG」と同じく、ブレイクを挟んでリフレインするアルペジオも聴き所だ。リフレインする直前のアシッドシンセによるテーマは原曲と全く一緒だが、このアルペジオの登場、及びコードを動かす(bAm×3小節, E, bG半小節ずつ)事によって、ポジティブ感に溢れる「Alien Project的」なピークタイムを創造している。これは見事。Remixの面白みが十分に味わえる力作である。

05. Deeper

続く「Deeper」は、アルバム収録曲唯一の「歌モノ」で、タイトルからも連想できるように、まるで深い海の中を優雅に泳いでいるかのような、雄大なテーマが特徴的な曲である。

前半から中盤にかけて、FXもしくは女性ボーカルに長めのディレイをかけた継続音的パートを、ややゆったりめのBPMに乗せる事で、浮遊感とテンション感を同時に演出し、展開バリエーションを多めに展開させてゆく。

その他のシンセの登場は最小限に抑えてあるものの、単音(one shot)も数多く見られるなど、バリエーションの多さが際立っており、明らかに、これまでのサウンドとは違ったアプローチで構成された曲だと言えるだろう。

中盤のフルオンパートがブレイクすると、またもや海の底へと連れていかれそうなパッドシンセが広がり、曲の「肝」であるボーカルトラックを軸に、シンセ・バリエーション・パートが「裏メロ」となって、絶妙な「掛け合い」を披露。曲は一気に加速するかのごとくピークタイムへと突入する。

胸を熱くさせるボーカルに、情熱溢れるコード進行が相まって、盛り上がりは頂点へ。アグレッシヴ一辺倒だけでは決して表現する事の出来ない、モーニングスタイルの醍醐味を堪能できる名曲だ。リスナーに隙を与えない曲構成も見事である。

Hypersonic - Access Denied [2/2]

Trance (Full On), Trance (Psychedelic), Trance 1 Comment

06. Day Light

続く「Day Light」は、タイトルが物語るかのようなフルオン全開の爽快サウンド。

このアルバムの各曲には、サイケトランス特有の不穏なテーマや、胸を締め付けるかのような叙情的メロディーが確かに存在しているものの、この曲を聴くと常々、Hypersonicのアプローチする全体のテーマは「ポジティブ」なんだなと思えてしまう。皆が腕を高々に掲げ、一斉にジャンプしているようなヴィジョンが透けて見えるサウンドは、聴いていて実に感情が豊かになってくる。

曲はイントロから最後まで活躍するメインメロディーが特徴的。様々なテーマが飛び交う中スタートする前半で「おっ」と思ったリスナーも多いのではないだろうか。キックのピッチが高く、ベースのうねりも手伝ってか、やけに「アタックが強い感」を感じさせる。さらにボーカルトラックも他の曲と比較すると多めで、多彩かつ複雑な構成で聴かせるタイプの曲ではなく、ストレートな表現でこそ成り立つ「盛り上がり」を重点に置いている曲だと言えそうだ。

入り乱れるアシッド感溢れるシンセが数々のテーマを生み出し、中盤からはボーカルテーマが全面に押し出され、よりアッパーなサウンドへと展開。後半雰囲気が一転、地鳴りのような歪み系シンセベースに支えられた縦ノリ感のあるテーマで幕を閉じる。今まで各曲に存在していたピークタイムらしきものは見当たらないが、決して不満が残る内容では無い。どちらかというと1stの「Freedom」に近いノリであるとも言えるだろう。

07. Night Life

悲しげなイントロアルペジオに雄大なギターが絡みつき、今までにないほどの静けさに包まれ曲がスタートする「Night Life」。一曲前の「Day Light」とは曲が持つ雰囲気はおろか、タイトルまでもが正反対のナンバーだと言って良いだろう。

曲の前半は特に際立った特徴も無いまま、「面白みの無い」ビートでスタートするが、そこに意図的にピッチをずらしたストリング・サンプリングの滑稽なメロティーが登場し、曲は一転、ディストーションギターをバックにしたフルオンサウンドを展開する。

しかし休む間もなく曲はまたまた一転。タイトルからは想像できない程のコミカルなシンセが飛び交うパートへと移行。テーマはもちろん、コードの移り変りも安定したものではなく、一歩先の展開が見えない奇妙な感覚を覚える。

そしてブレイクを挟み、「待ってました!」といわんばかりのゴリゴリとしたアシッドシンセが徐々にその姿を現し、一気に過熱度を加速させ、爆発的なピークタイムへと突入する。「お得意」のカッティング・シンセの上に、高音&高速アルペジオが強烈に駆け巡るこのサウンドは非常に強烈だ。もはや前半〜中盤までの「味気ない」雰囲気は皆無である。

そしてイントロで聴かせた静けさの漂うアルペジオで曲は終了。特定のテーマを全面に押し出した「Day Light」の後に、これだけ対極した曲を持ってくるHypersonicのセンスにも注目されたい。

08. Disco Mania

まるで夜が明けたかの様な、はたまた夜のクラブパーティがいつまでも続いている様な雰囲気が全体を包み込む「Disco Mania」。キラキラと輝くミラーボールが良く似合いそうな一曲である。

リッチで壮大なパッド音に乗せたブライトシンセが美しいイントロから曲はスタート。アシッド感を極力抑えた綺麗モノのシンセで色鮮やかに曲は展開してゆく。まさにディスコナンバーとなりそうな、良い意味で古臭いテーマの連続にニヤリとさせられる。

中盤は軽いブレイクを挟み、メインテーマとなるアルペジオが鳴り響く中、コード感を極力抑えたアシッドなパートへと展開する。ラップボーカルまで飛び出すアッパーなサウンドではあるが、実にストレートかつ自然な構成であり、これまでの曲展開とは一味違った面白みがある。

しかし、それだけで終わらないのがHypersonic。曲は前半の雰囲気をそのまま残しながらブレイクし、宙を舞うような、澄み渡るピアノのイントロがリフレイン。胸を熱くさせるその音色からいきなりディストーション・シンセが登場。お得意の「エグい」リフが前半のテーマと激しく絡み合い、混ざりながら絶頂のピークタイムへ突入する。正にサイケとディスコサウンドの融合である。アシッド系統のシンセを全面に押し出していた、各曲のピークタイムとは異なる方法論で、更に更にと曲のポテンシャルがグレードアップしてゆくサウンドだと表現できるだろう。

そして再度登場するピアノイントロが終盤を飾り、曲は幕を閉じる。サイケトランスとしては個性的かつ実験的な曲にあたると思うが、型崩れになってない点は評価すべき所だろう。ただし、綺麗すぎるテーマが全体を占め、更にアシッドシンセの登場も少なめなので、粋なサイケファンには少々物足りない面もあるかもしれない。

09. Start Again

最後を飾るのはアルバム唯一のダウンビートナンバー「Start Again」。

近年、サイケトランスシーンでは、ライヴやパーティの後に流れる、Chillout的要素を含めた「歌モノ」が増加している。(もちろん、ライヴ中に披露する事も多々ある。)この曲もその風潮からか。音楽的には退屈な曲だが、CDのラストといった点を考えると自然な流れではある。

Aメロのラップ、中盤登場するシンセリフが特徴的。覚えやすいサビはパーティでの大合唱が期待できそうだ。Infected Mushroomの「I Wish」を意識したと考えられなくもないが、構成は酷似しているものの、この「Start Again」は、お得意のアラビア音階が絡んでいるため、特有の個性はアピールできているように思う。タイトルがHypersonicの今後の活動を比喩しているかのようだ。

総括

とにかく一曲一曲での展開の豊富さが何よりものHypersonicの「魅力」ではないだろうか。

そこに絡んでくるアラビア音階もまた良い味を出しているし、曲構成は複雑なものの、しっかりとピークタイムでアゲてくれる事にも安心感を覚える。そして何よりその展開の速さ、豊富さにより、「また聴きたい」もしくは「聴き込みたい」といった欲求が出てくる点は、評価できる所だと思う。

また、音質そのものも他のフルオン系統のアーティストに比べると個性的で、チューニング高めの歯切れのよいドラム音が、全体的に締まった感じを演出している。1stの「Freedom」ではそこまで印象的ではなかったが、ここにきてHypersonicの音の好みが全開に出ているように思える。ただ、それが狙いなのかも知れないが、全体的に音像の奥行が不足しているのは少々残念であった。

多数のイスラエリ・トランスアーティストが切磋琢磨している中、Hypersonicのように、しっかりと「芸」のあるアーティストが今後どのような活動を見せてゆくかが非常に楽しみであると同時に、そんな期待にしっかりと応えてくれる「Access Denied」であった。

Hypersonic - Access Denied [1/2]

Trance (Full On), Trance (Psychedelic), Trance 14 Comments

Artist: Hypersonic
Title: Access Denied
Label: Phonokol Records
Released: July 2007

01. Suicide

1st Album「Freedom」のヒットが記憶に新しいイスラエリ・フルオン期待の新星Hypersonicが放つ本作「Access Denied」。

1曲目は、意味深なタイトルが付けられた「Suicide」で幕が開ける。

優しくも憂鬱さが漂うアルペジオから始まり、なんともコミカルな表情をしたアシッドシンセが耳に飛び込んできたかと思えば、2:30付近で突然スイング調拍子へとシフトチェンジし、ブレイクを挟んでギターリフ全開のフルオンモードへ。息もつかせぬ程の展開に、彼らが持つオリジナリティとセンスが垣間見えるようだ。

しかし、Hypersonicが持つオリジナリティはこのポイントだけに限らない。これはアルバム全体を通して言える事だが、上モノを飾るメロディーはアラビア音階の影響が強く表れているし、レゾナンスの効いたリードシンセは、彼らならではの「クセ」を演出しているようにも思う。ただ単に奇麗なだけでもなく、アグレッシヴに攻め立てるだけでもない、良い意味での「気持ち悪さ」や「怪しさ」が「Hypersonicのオリジナリティ」とも言えるだろう。聴いていて実に爽快だ。

曲のレヴューに戻ろう。ギターリフが炸裂したところで、イントロのアルペジオを挟み、一気に曲はエネルギーを解放するかのように、アシッドリフ、アシッドシンセ全開のピークタイムへ。アルバム1曲目ながら、非常に凝った曲構成にノックアウト必至である。

そして、再度イントロのアルペジオが流れ、曲の終焉と共にアルバムの幕が開ける。この不穏なアルペジオと、曲のタイトルが「期待感」を醸し出しているかのようだ。

02. Plug & Play

続く「Plug & Play」。ここでも「Hypersonic節」が全開である。

イントロの特徴的な和声的短音階が不安感を煽るものの、曲は一転してアコースティックギターをかき鳴らすと云う斬新なトラックへ続く。トランスというものを根本にしっかり持ちつつも、ディスコ調のダンサブルなこのパートには正直驚いた。

しかし、そんな感覚もつかの間。軽いブレイクを挟み、ポリ系のシンセをリードとした、コードチェンジの激しいパートへと展開する。相変わらず凄い展開の早さだ。この情報量、技術量の豊富さは並ではない。

ここでもアラビア調の音階が全面に押し出されており、どこか哀愁漂うメロディが頭の中を駆け巡る。時に情熱的ですらあるこのメロディには、胸を熱く躍らせる魅力があり、単に「ダンス」といった概念だけでは得られない高揚感があるように感じた。前半で見せたアコースティックギターでもそうだが、ほとんどが打ち込みによる音なのにも関わらず、この曲には「生」っぽさが影を潜めているようにも思う。

しかし、テーマパートおよびテーマを目まぐるしく展開してゆく事により、一定の雰囲気を残さない表現が、結果として不安定感・無機質感を増強し、曲そのものの輪郭を引締め直している。曲後半はあれだけ移り変わっていたコードチェンジを抑え、安定感を取り戻しつつ、サイケデリックかつアッパーなフルオンパートへと移行する。実に聴き応えのある曲構成だ。

03. Access Denied

3曲目はアルバムタイトルともなっている「Access Denied」。

この曲の面白みは、なんと言っても中盤と後半に顔を見せるゴリゴリとしたエレキベースとディストーションギターの存在だろう。このパートは従来のフルオンにありきだった、「あくまでも盛り上げる為のギタートラック」とは趣向が違い、もろにHR/HMの要素が飛び出している。実験的ではあるが、そのインパクトの大きさが曲単体の面白みを更に引き出している事は明確だ。

前半からキレイ目の上モノのパート数を最小限に抑え、テーマを強調してゆく実にアグレッシヴな展開である。比較的シンプルなベースリフが安定感を聴かせる中、徐々に重なってゆくアシッドシンセが絡みつき、これまでにない不穏感をリスナーに与える表現だ。このままピークタイムに突入してもなんら不思議ではないのだが、ここで見事に曲は豹変し、上記のディストーショントラックが耳に飛び込んでくる。「Access Denied!」というタイトルコールが期待感を煽る中、再び曲は一変し、ブライトシンセが空を泳ぐパートへ。

一体この展開は何を狙っているのだろうか。約8〜32小節を単位としてテーマが変わる度に、パートやリズムを含めた構成全てが入れ替わる、この信じがたい展開バリエーションは、明らかにアルバムの中でも異質であると同時に、存在感をアピールしているようにも感じとれる。

(ここからは個人的解釈だが、曲のタイトルを直訳すると、「アクセスが拒否されました」となる。つまり「閲覧するにはパスが必要」となるわけだ。この意味合いを考えると、上記で挙げたタイトルコールを繰り返す中盤の印象的なディストーショントラックには、警報音のようなシンセが織り交ぜられていることもあり、「何かを得てしてでしか聴くことのできないパートを意図的に隠している」と考えられるのではないだろうか。)

そして後半はポリシンセを際立たせ、一気に加速するようにピークタイムへ。繰り返されるリフが徐々に音数を増してゆく、ダンスフロアを揺るがすような強烈なピークタイムだ。これぞサイケトランスの醍醐味である。

04. I Can Feel It

続く「I Can Feel It」。このあたりからアルバムの展開そのものがアグレッシヴな方向へと向かってゆく。これはライヴ感を強く意識して作られたものだと思うが、サイケトランスでは定番の方法論ながらも、その無理のない自然な繋がりには、Hypersonicの豊富な経験が生かされているように思う。本作を聴く上で重要なファクターの一つだ。

さてこの「I Can Feel It」だが、前半は定番のレゾナンス+ピッチベンドの効いたハードシンセを中心としたテーマで攻め立ててゆくものの、これまでの展開のめまぐるしさは影を潜め、中盤以降に登場する印象的なボーカルを軸とした様々なパートで、「バリエーションを変えながら同じテーマを演奏する手法」を聴かせ、より一層の安定感と疾走感を醸し出している。音を足したり、引いたりと表情豊かな印象だ。

「I Can Feel It!」と繰り返されるボーカルパートが躍動感溢れるリズムの上で踊る中、お得意のアラビア音階シンセが怪しい雰囲気を色付けるように飛び回る。このドライヴ感溢れるテーマを後半直前まで引っ張り、後半はブレイクを挟み徐々にコードアップさせ、またまたフロア直撃型の強烈なピークタイムへと突入。マイナー・コードの構成音をフルに鳴らした細かい高音アルペジオが、リスナーの高揚感を極限まで引き上げる。その後、エレキギターのフィードバックを再現したようなメロウなシンセでピークタイムの余韻を残しつつ曲は終了。「盛り上がり」といった点において、この曲は圧巻だと言っても良いだろう。

ただその一方で、アルバム収録曲の中では、比較的展開が少ない曲でもあり、音楽としての意外性やエンターテイメント性が損なわれていると考える事もできる。良い意味で捉えればストレートかつタイトな表現だが、もう少しアクセント的要素を追加してもマイナスポイントにはならなかったであろうと思われる。

05. Dramatic Combo

「I Can Feel It」の流れをそのまま受け継ぐようにスタートする「Dramatic Combo」。

とにかく中盤の懐古感漂うマイナー調シンセ・メロディーのユニゾンが耳に残る。このユニゾンのせいもあってか、曲の全体像としては、他のアルバム収録曲(M-9「Start Again」を除く)とは一風変わったサウンドを演出しているように感じた。

前半から9th, 11thの構成音を強調したストレートなマイナー・コードに乗せたテーマが全面に押し出され、(アッパーではあるけれども)どこか緩やかな音の流れに身を委ねているような印象を受ける。奥行があるとも言えるだろうか。

そのヴィジョンを受け継ぐように中盤のメインテーマが顔を出す。展開の多いHypersonicだけに、最初にこのメロディーラインを聴いた時はすぐに別のテーマにバトンを渡すかと思ったのだが、これに限ってはスタート(3:15付近)からブレイク(4:50付近)まで56小節と、同じテーマを長めに引っ張っている。とは言っても、決して「くどい」といった感覚には陥らないだろう。最初はシンプルかつ虚ろな印象を与えるものの、次第に音数を増してゆき、 40小節目あたりからは同じメロディーラインにも関わらず、フルオン全開のエネルギッシュなパートへと「ドラマティックに」変貌する。これは見事。展開の多さだけがウリではない事を、リスナーへ強くアピールしているかのようだ。

続く後半は、この雰囲気からなだれ込むようにピークタイムへ。より一層のエネルギーを解放するかのごとく炸裂するフルオンサウンドには思わず踊らされてしまう。音数が多い反面、音色・構成音共に垢抜けた感のあるアルペジオが反復するため、聴いていて実に心地よい。前半のマイナー調から、ラストのピークタイムの開放感まで、隙を与えずにドライヴする展開はさすがと言えるだろう。